2013年度は、以下の点に注目して研究を進めた。 第1に、家計・消費構造の歴史的検討である。本年度は戦間期の煙草消費に絞り、内閣統計局『家計調査』や、『東京市勤労家計調査』『細民調査』等の統計を利用して分析を行った。そこでは、低所得層ほど煙草消費が大きく家計を圧迫していることを析出した。 第2に、茨城県筑西市を中心とした農地流動化の展開、大規模担い手経営の形成についての研究である。本年度は特に、政権交代に伴う変化に注目した。農業保護政策(直接支払政策)の損失補償水準の高まり、規模要件の除外の結果、水稲管理作業が採算化されることでこれまで農地の出し手だった農の営農意欲が刺激され、農地流動化が停滞したことを実態調査によって収集した資料から明らかにした。 第3に、広島県世羅町における集落営農組織の展開についてである。世羅町における集落営農組織の経営目標は、労働力の削減につながる生産過程の効率化による収益性改善ではなく、経営多角化による収益性改善と雇用吸収力の増大の両立である。そして、それを支えているのが増大した直接支払であることを実態調査から明らかにした。 第4に、山形県鶴岡市における農業構造変動の検討と、直売所展開との関連についてである。鶴岡市は小規模農家の離農と大規摸担い手経営への農地集積が遅れている地域である。残存する小規模農家の営農継続を支援しているのが市内各地に設立された農産物直売所である。農産物直売所では他業態と比べて低い手数料率、高齢者でも対応可能な少量多品目販売という直売所の展開は、停滞的な農業構造と極めて適合的であることを実態調査から明らかにした。
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