研究課題/領域番号 |
11J08231
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
関澤 佳太 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 人工光合成 / 光触媒 / 金属錯体 / 半導体 / Z-スキーム / 可視光 / 二酸化炭素還元 / 光誘起電子移動 |
研究概要 |
太陽エネルギーを用いて、CO_2を化学資源へと変換する人工光合成システムを構築できれば、エネルギー・炭素資源の枯渇そして地球温暖化という人類が抱える深刻な問題を一挙に解決できる可能性がある。金属錯体を用いた光触媒は、太陽光の主要な成分である可視光を利用し、高効率にCO_2還元を駆動することが可能である。しかし、酸化力が弱く、1-ベンジル-1,4-ジヒドロニコチンアミドなどの強い犠牲還元剤が必須である。このため、反応全体のギブズエネルギー変化は負となってしまい、光エネルギーを化学エネルギーへと蓄積することはできていない。一方で、いくつかの半導体光触媒は、可視光で、水やメタノールなどの弱い還元剤を酸化することが可能であるが、還元力が弱くCO_2還元を同時に駆動することはできなかった。そこで、高いCO_2還元能を有する金属錯体と強い酸化力を有する半導体を複合化させ、順次的に2光子用いるZスキーム型CO_2還元光触媒の創製を目指し研究を行った。 ルテニウム(II)二核錯体を銀担持タンタルオキシナイトライド半導体粉末に吸着させた複合体を、CO_2雰囲気下メタノール中に懸濁させ、400nm以上の可視光を照射した。その結果、触媒的なギ酸と水素の生成が確認された。同時に、メタノールの酸化生成物であるホルムアルデヒドが化学量論的に生成していた。すなわち、メタノールを電子源としたCO_2還元が進行していることが示された。この反応のギブズエネルギー変化は正であり、金属錯体光触媒を用いた系としては初めて光エネルギー蓄積型の反応を駆動することに成功した。同時に、可視光でCO_2還元を駆動するZスキーム型光触媒としても初めての例である。さらに、この系に改良を加えることで、水中においてもCO_2の還元が確認され、水を電子源としたCO_2還元光触媒として駆動する可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
半導体と金属錯体を組み合わせ、可視光を用いて、弱い還元剤であるメタノールを電子源とした二酸化炭素の還元に成功した。すなわち、本研究で目標としていた金属錯体-半導体複合系光触媒システムの構築を達成した。本研究の最終目標は水を電子源とした二酸化炭素還元であるが、すでに水中でも二酸化炭素の還元が確認されており、当初の計画以上に進展させることができた。
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今後の研究の推進方策 |
本光触媒系が水を電子源としたCO_2還元を駆動していることを確かなものにするために、水の酸化生成物である酸素の定量や標識実験などの詳細な検証を行う。さらに、金属錯体の分子構造、半導体、助触媒の検討により、高効率化・高機能化に向けた検討も行い、本研究で開発した金属錯体-半導体複合系光触媒の多様性を示していきたいと考えている。
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