研究課題/領域番号 |
11J08245
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
吉野 達郎 東北大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | スピントロニクス / スピン流 / スピンポンピング / 強磁性共鳴 / スピンホール効果 / スピンダイナミクス |
研究概要 |
電子のスピン自由度をエレクトロニクスに組み込んだ「スピントロニクス」において、スピン流(角運動量の流れ)の果たす役割が重要になっている。その中でもスピントロニクスではスピン流生成機構の電子論的な理解が不可欠である。「制御された単結晶と良く定義された界面」を用いたスピン流生成の研究が必要となるが、単結晶を用いてスピン混成コンダクタンスを考慮したスピン流生成の実験は今までほとんど行われてこなかった。これらの目的を満たす研究を遂行するために、イットリウム鉄ガーネットY_3Fe_5O_12及びNiFe合金上の逆スピンホール効果の系統的な定量測定を行う必要があり、その前段階としてNiFe合金の組成を変化させ、スピン混成コンダクタンスと逆スピンホール効果による生成スピン流の関連性を調べた。そのために、まず強磁性金属NiFe合金/Pt金属二層膜を成膜し、スピンポンピングによって強磁性金属から励起されたスピン流を高感度に検出する試料構造を作成した。マイクロ波分光を用いることによって、各NiFe合金の飽和磁化や磁気緩和定数などの強磁性体の物質パラメーターを測定し、生成されるスピン流との関係性を調べた。この結果から、強磁性金属NiFe合金を変化させることによって、スピンポンピングによって生成されるスピン流は、強磁性金属NiFe合金界面におけるスピン流生成効率を表すスピン混成コンダクタンス及びマイクロ波分光から得られる強磁性体の物質パラメーターによって決定づけられることを初めて示した。また、強磁性絶縁体であるY_3Fe_5O_12を用いて同様の実験を行い、逆スピンホール効果を経由して誘起される起電力として検出した。このときも電子構造等に大きな違いがあるのにもかかわらず、全ての強磁性体においてマイクロ波分光から得られる強磁性体の物質パラメーターによって一意的に決定づけられることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
強磁性金属及び強磁性絶縁体を用いてスピン混成コンダクタンスを考慮したスピンポンピングによるスピン流生成の実験を実現できた。これらの結果は、AppliedPhysicsLetters誌及びJournal of Applied Physics誌に掲載を許可された。しかし、界面を考慮した時のスピンポンピングの測定及びスピン混成コンダクタンスの同定は十分にはまだ行われてはいなく、今後の課題とする予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題では、界面をほとんど考慮していないときのスピン混成コンダクタンスの同定を行い、実際に見積もることはできた。しかし、「制御された単結晶と良く定義された界面」を用いたスピン流生成の研究についてはまだ十分には行われてはいない。しかし今年度行なった先行研究である強磁性金属及び強磁性絶縁体を用いたスピン混成コンダクタンスを考慮したスピンポンピングによるスピン流生成の実験によると、界面の状態に関係なく良好な逆スピンホール効果による起電力が観測されたので、生成スピン流の普遍性を追求する実験を行いたいと考えている。
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