研究課題/領域番号 |
11J08264
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
下川 良彦 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 蛋白質 / 立体構造解析 / 糸状菌 / メロテルペノイド / 酸化酵素 / 環化酵素 |
研究概要 |
Aspergillus oryaae由来フラビン依存性酸化酵素及び環化酵素の機能解析 現在、ゲノム解析が終了している糸状菌の一種である麹菌(Aspergillus oryzae)より見いだされたPax/Atmクラスターに含まれる酸化酵素(FMO,BAE63217)及び環化酵素(CYC,BAE63218)の機能解析に取り組んでいる。最初に、in vitroによるFMOの機能解析を目的として、酵母及び大腸菌を宿主とした発現系の構築系確立を試みた。麹菌よりgDNAを抽出後、overlap PCR法を用いて予測されたイントロン領域を除去した後、目的遺伝子を酵母発現ベクターpESC-Ura vector及び大腸菌発現用ベクターpET22bへと組み込んだ。pESC-FMOプラスミドをGIL77株及びINVSc2株へと形質転換した後、誘導培養した酵母から粗酵素抽出液を得た。粗酵素、及び基質と予想されるgeranylgeranyl-indoleを補酵素(FAD or FMN,NADPH or NADH)と共に酵素反応を行ったが、基質が酸化された化合物の検出は現在至っていない。大腸菌発現系においては、C末にHis-tagを付加した融合タンパクとして発現させた後、Niキレートカラムを用いたアフィニティー精製を行った結果、確かに本酵素の発現を確認できたものの、その発現量は微量であった。大腸菌発現系から得られた精製酵素を用いて上記同様の手法でFMOのin vitro解析を試みたが、酵母発現系と同様、酸化化合物の検出には至っていない。これらの原因として、FMOの膜ドメイン領域が考えられた。蛋白構造予測ソフトを用いてFMOの構造を予測した結果、N末とC末の一部で疎水性領域が見られ、その部位が膜に結合していると予想された。その結果、酵母や大腸菌などの異種発現では酵素本来のコンフォメーションを形成できていない可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の到達目標として、(1)酸化酵素の加幅加系による機能解析、(2)部位特異的変異導入による酵素反応機構の解明を計画していた。実際に酵母及び大腸菌を宿主とした異種発現により酵素発現系の確立には成功したものの、酵素機能を解析するには至っていない。膜ドメインを有するタンパクであることから当初から困難は予想されたが、次年度における目標を達成できるものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、糸状菌メロテルペノイド、特にインドールジテルペンの生合成に普遍的に関与するフラビン依存性酸化酵素、FMOの立体構造解析を目的としている。その為、タンパクの結晶化を視野に入れたin vitro系の確立を試みたが、結果は芳しくない。そこで既に構築したin vitro系による酵素機能解析と同時に、糸状菌を宿主とした発現系の構築を試みる。本研究室では既に、Aspergillus oryzae M-2-3株及びNSAR1株を宿主としてpyripyropene,terretonin生合成クラスターの機能解析に成功しており、本研究対象であるAspergillus oryzae由来paxilline生合成クラスターにも適応可能と推測される。本手法を適応すれば、生合成に必要な遺伝子をクラスター全体を宿主へと組込むことで物質生産の観点からも有望である。
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