研究課題
本年度はドラッグデリバリーシステム(DDS)を生体内でリアルタイムに直接観察する手法である生体内共焦点レーザ顕微鏡システム(intravital real-time confocal laser scanning microscopy:IVRTCLSM)の構築を中心に行い、耳介皮膚血管を流れるDDSの血流中における凝集体形成及び血小板との共局在を定量的に求める方法を開発した。具体的には、IVRTCLSMを用いて、実際に生きた実験動物の血流中において、典型的なDDSであるポリプレックス及びポリプレックスミセルがどのような挙動を示すかを評価した。ポリプレックス形成には、ブランチポリエチレンイミン(BPEI)、ポリ-L-リシン(PLys)及びポリアスパルタミド誘導体PAsp(DET)の3つのポリカチオンを用いた。一方、ポリプレックスミセル形成にはポリエチレングリコールとPLysのブロック共重合体(PEG-PLys)、及びポリエチレングリコールとPAsp(DET)のブロック共重合体(PEG-PAsp(DET))を用いた。これらのDDSの、耳介皮膚血管を流れる挙動をIVRTCLSMにより観察したところ、BPEI、PLys、PAsp(DET)ポリプレックスは血流中において即座に凝集体を形成し、血小板と共局在している状態が観察された。一方、PEG-PLys、PEG-PAsp(DET)ポリプレックスミセルは血流中において凝集体を形成せず、血小板との共局在を示すこともなかった。さらに、画像解析により凝集体量の定量、血小板との共局在の定量を行った。その結果、ポリエチレングリコールによるポリプレックスの血流中動態の改善を定量的に示すことに成功した。この成果はJournal of Controlled Release誌に報告し、さらにはその表紙に採用された。
2: おおむね順調に進展している
ドラッグデリバリーシステム(DDS)が実際に生きた動物の中でどのような挙動を示すかを直接的に評価する方法を、生体内共焦点レーザ顕微鏡システム(IVRTCLSM)を用いて確立することに成功し、血流中におけるDDSの定量、及び凝集体形成や血小板との共局在など、動的な情報を容易に獲得することが可能となった。これらの技術は一般的なDDSに応用することが可能で、IVRTCLSMを応用した研究は既に3本の雑誌論文に報告した。
現在のところ、光応答性キャリアに搭載しているデンドリマー型光増感剤の生体内における蛍光強度は検出するのに必ずしも十分ではなく、定量的な評価を行うことが容易ではない。それ故に、より強い蛍光を発する光増感剤を用いた光応答性キャリアを構築することが必要であると考えられる。今後は、in vivoで光応答性キャリアを評価するにあたって適切な光増感剤を検討し、その光増感剤を搭載した光応答性キャリアの評価方法を構築する。
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