研究課題
今年度は全身投与型光応答性遺伝子ベクターの細胞内動態評価及びin vivoでの血流中挙動評価、遺伝子発現評価を行った。まず、構造照明化法(超解像蛍光顕微鏡)によりin vitroでの細胞内動態を観察した。その結果、光増感剤がGFPでラベル化されたリソソーム膜に局在していることが明らかとなった。光増感剤がリソソーム膜に局在することは、photochemical internalization(PCI)によるプラスミドDNA(pDNA)の細胞質移行を促進する極めて重要なステップであり、全身投与型光応答性遺伝子ベクターはそれを達成できていることが示された。さらに光照射で光増感剤を活性化するとpDNAが徐々に細胞質に移行する様子が共焦点レーザ顕微鏡により観察された。この細胞質移行促進の結果、遺伝子導入効率が約100倍上昇することが確認されている。次に全身投与型光応答性遺伝子ベクターが血流中において凝集体を形成していないことを確認した結果、光応答性遺伝子ベクターは凝集体を形成せずに血流中を流れていることが明らかになった。最後に、マウスのHeLa皮下腫瘍モデルを用いて、全身投与型光応答性遺伝子ベクターが静脈注射後に光照射選択的に遺伝子導入効率を上昇させることができるかを検討した。蛍光タンパク質をコードしたpDNAを内包した遺伝子ベクターを静脈注射してから24時間後に腫瘍に対して680nmのレーザを照射し、その48時間後に腫瘍を取り出して蛍光タンパク質の発現を共焦点レーザ顕微鏡により観察した。その結果、光照射を行った群からは、光照射を行わなかった群と比較して、明らかに高い蛍光シグナルが得られた。このことから、本研究で開発した遺伝子ベクターは全身投与後に光照射部位選択的に遺伝子導入効率を上昇させることができるということが示された。
1: 当初の計画以上に進展している
今年度の検討の結果、本研究で開発された全身投与型光応答性遺伝子ベクターが、in vivoにおいて光照射部位選択的に遺伝子を導入することができることが明らかとなった。現在までに、全身投与後にPCIにより遺伝子導入効率を上昇させた報告例はなく、本研究が初めての成功例となる。
全身投与後に光照射部位選択的に遺伝子導入効率を高めることに成功した。この成果を学術雑誌に報告すべく、遺伝子ベクターの物性をより詳細に調べていく予定である。
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