研究課題/領域番号 |
11J08329
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
小嶋 隆幸 東北大学, 大学院・工学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 希少元素 / 貴金属 / 磁気異方性 / 垂直磁化膜 / L10 / FeNi |
研究概要 |
ハードディスク等の高密度磁気記録媒体においては垂直磁化膜が用いられ、記録を安定に保つために一軸磁気異方性エネルギー(K_u)が大きなPtを用いた材料が使用されている。そこで本研究では、Ptのように希少で高価な貴金属を用いない垂直磁化膜材料としてFe-Co-Ni系規則合金に着目し、試料作製および特性評価を行った。 本年度は、FeとNiを1原子層ずつ交互に蒸着する手法でL1_0-FeNi薄膜を作製し、磁気異方悸と規則度および格子ひずみの関係を調べた。L1_0-FeNiの磁気異方性は規則度に比例して増大することが明らかになり、これらが線形関係にあるとすれば、一軸磁気異方性エネルギー(K_u)が最大で14×10^6J/m^3に達し得ることがわかった。また、規則度を0.65以上にまで向上させることでK_uが形状磁気異方性を超え、垂直磁化膜が実現する可能性が示された。磁気異方性は格子ひずみによっても変化し、結晶の軸比c/aが1.00の試料において大きなK_uが得られ、c/aが小さくなるとK_uが減少する結果が得られた。また、試料作製条件最適化のため、FeNi層の交互積層回数を変えた試料(5~200回)を作製し、特性を調べた。その結果、積層回数が40~50回程度の場合にK_u・規則度ともに高い値が得られることがわかった。以上の試料の規則度は、SPring-8の高輝度放射光を利用した斜入射面内X線回折測定の結果から見積もったが、本年度は最適な測定条件を見出すことに成功し、規則度算出の精度が格段に向上した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は震災の影響により、研究に着手するのが遅れただけでなく、研究の途中に震災が遠因と思われるようなトラブルにも見舞われたため、研究が多少遅れている。一方で基礎的な実験データは着実に集まっており、高品位試料の作製に至れば、その後の研究は急速に進展する。
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今後の研究の推進方策 |
来年度の第一の目標は垂直磁化膜を得るこであり、L1_o-FeNiの規則度を向上させる必要がある。そのために、原子レベルで平坦な表面を有しL1_o-FeNiと格子整合性が良いバッファ層の作製に取り組んでいるが、理想とするようなバッファ層の獲得には至っていない。そこで、来年度はCu等の金属単結晶基板を用いることにより理想的な下地を形成し、高規則度試料の作製を目指す。また、Coを添加することで磁気異方性の増大を図り、垂直磁化膜の実現を目指す。Co添加の三元系だけでなく、Fe-Co二元規則合金も作製し、3d磁性元素規則合金の磁気異方性について総合的に研究を行う。
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