研究課題/領域番号 |
11J08349
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
長野 稔 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 特別研究員(PD)
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キーワード | イネ / 膜ラフト / スフィンゴ脂質 / 耐病性 |
研究概要 |
膜ラフトは主に細胞膜上に存在する小さな膜ドメインであり、数多くの膜タンパク質の足場となることで、植物の耐病性など様々な細胞内反応に関与することが報告されている。しかしながら、膜ラフトがいかに植物の免疫機構を制御するかについては未だ明らかとなっていない。そこで本研究では、膜ラフト形成に重要であると考えられるスフィンゴ脂質2-ヒドロキシ脂肪酸を改変することで、膜ラフトとイネの耐病性との関係について明らかにしようと試みた。 イネには2因子のスフィンゴ脂質脂肪酸2-ヒドロキシラーゼ(OsFAH1,0sFAH2)が存在する。RNAiを用いたダブルノックダウン系統(OsFAH1/2-KD)の中から、2-ヒドロキシ脂肪酸を有したスフィンゴ脂質が減少した系統を得た。そのOsFAH1/2-KD系統を用いた解析から、イネの細胞においてスフィンゴ脂質2-ヒドロキシ脂肪酸が膜ラフト形成の重要なファクターであることを示した。さらに、ラフト領域が含むと考えられている界面活性剤不溶画分(DRM)におけるプロテオーム解析やイムノブロット解析から、低分子量Gタンパク質OsRac1や活性酸素種(ROS)を生成するOsRbohがイネの膜ラフトに局在することを明らかとした。また、OsRac1とOsRbohがラフトに局在することが病害応答時のROSの産生に必須であることも明らかにした。さらに、イネいもち病菌の感染実験から、スフィンゴ脂質2-ヒドロキシ脂肪酸が形成する膜ラフトがイネの耐病性に重要であるという知見も見出した。以上の結果から、膜ラフトはイネ耐病性に重要なOsRac1やOsRbohの足場となることでROSの産生を促し、耐病性に寄与することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
膜ラフトの可視化、タンパク質解析、及び病原菌の感染実験等が順調に行え、イネのスフィンゴ脂質2・ヒドロキシ脂肪酸が膜ラフトを介して耐病性に寄与しているという仮説の証明が達成されつつあるため。
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今後の研究の推進方策 |
抵抗反応時において膜ラフトに局在するタンパク質を特定し、その解析を行う。またその際のラフトを形成する脂質の変化も追う。
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