研究課題/領域番号 |
11J08363
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
土岡 俊介 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 特別研究員(PD)
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キーワード | 対称群 / 半テータ関数 / 増大度関数 / アルチン半群 / 量子群 / モジュラー表現 / 導来圏 / 圏論化 |
研究概要 |
本年度は、まず前年度に得られていた量子群の可積分最高ウェイト表現がいつ特殊化で既約性が保たれるのか、という柏原正樹氏の問題に関する結果を論文にまとめ、"Graded Cartan determinants of the symmetric groups"と題して投稿し、受理された。 また以前、安田正大氏(大阪大学)らと共同で研究した、アルチン半群の増大度関数に関する結果についてさらに議論を進めた。斎藤恭司氏(東京大学)は、彼の分配関数の理論において、アルチン半群の増大度関数の分母の零点に関する興味深い予想を3点提出した。我々は、増大度関数の分母の適当な母関数を取ることで、そこにラマヌジャンの半テータ関数が現れることを利用し、半テータ関数の解析を通じて斎藤氏の予想のうち、彼の理論にもっとも本質的に関わる「絶対値最小の零点に関する予想」をA型の場合に漸近的に証明してきた。一方、半テータ関数そのものも近年、研究者の関心を集めている。例えば、Sokalは半テータ関数のleading rootのテイラー展開が非負係数を持つことを証明し、Prellbergはその組合せ論的な意味付けを与えた。我々はこの結果に基づき、半テータ関数の2番目の解に関するある種の負係数性を証明し、leading rootに関する性質と合わせて、leading rootや2番目の解がsquare root型の特異点を持つことを証明した。これはSokalやPrellbergによって予想されていた問題である。我々はまた、これらの級数の収束半径についても一定の評価を与えることに成功した。さらに半テータ関数とは別に、アルチン半群の増大度関数の分母に関する興味深い組合せ論的全単射を構成することで、半テータ関数の結果を任意有限型およびアフィン型のアルチン半群の増大度関数に関連付け、斎藤氏の「絶対値最小の零点に関する予想」をA型以外でも漸近的に証明することに成功した。「漸近的」を「任意」に変えることが今後の課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
二点挙げる。第一に対称群の次数付きカルタン行列を計算し、これに基づいてクルシャマー・オルソン・ロビンソン予想(KOR予想)の量子化を提案した。論文を発表した約半年後にA.Evseev氏によってKOR予想は解決されたが、その量子版は未解決であり、表現論のポピュラーな分野に興味深い問題を提出した有益な寄与と考える。第二に、安田正大氏らとの共同研究によって斎藤恭司のアルチン半群の増大度関数に関するある予想をA型の場合に証明していたが、これを任意の有限型とアフィン型に拡張した。我々が示した半テータ関数のleading rootがsquare root型特異点を持つという定理は、近年関連研究者によって提示されていた問題であり、進展と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
圏論化の研究を進めて、スピン対称群に関するブルエ予想を証明する。具体的には、我々の導入した箙ヘッケ超代数がパリティの取り方に依らず量子群の半分や可積分最高ウェイト加群を圏論化し、可積分最高ウェイト加群へのワイル群作用が導来同値に持ち上がること(捻じれs12圏論化)を証明する。また指標値と分岐則に関する組合せ論を用いて、特殊なスピン・ブロック(これについてはすでに候補がある)についてブルエ予想を解き、上記の導来同値と合わせてブルエ予想を証明する。この過程で同定される特殊ブロックの解析のために環積のスーパー版についての一般論を整備すると共に、振れアフィンA型の標準基底との関連付けを行う。
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