研究課題/領域番号 |
11J08394
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
伊村 芳郎 東京理科大学, 総合化学研究科, 特別研究員DC2
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キーワード | ナノワイヤー / 分離 / 形態制御 / 金 / 貴金属 / 分子集合体 / ナノ結晶 / 鋳型 |
研究概要 |
金や白金、パラジウムなどの貴金属ナノ結晶は、触媒として有用であるため多くの研究がされている。この触媒反応の選択性および活性は、ナノ結晶のサイズや形態、結晶構造による影響を受けるため、それらを精密に制御したナノ結晶の合成法および分離法の確立が望まれている。本年度は、報告例の少ない貴金属ナノワイヤーの作製と結晶構造ごとの分離法の開発を中心に行った。ナノワイヤーの作製に、長鎖アミドアミン誘導体(C18AA)が形成する分子集合体を鋳型として用いたところ、鋳型の形に対応した貴金属ナノワイヤーが得られた。この結果は、C18AAが形成する分子集合体を鋳型として用いることで、様々な金属への応用が期待できることを示している。しかしながら、ナノワイヤーを合成した際の収率は、100%ではなく副生成物として球状の粒子が多く生成してしまった。例えば金ナノワイヤーの収率は40%程度であるため、ナノワイヤーと球状粒子を分離する必要がある。これまでにC18AAは、Au(111)面に対しモノレイヤーで吸着しナノ結晶を疎水化し、一方(100)面(110)面に対してはバイレイヤーで吸着し親水化する性質があることがわかっていた。ナノワイヤー表面は球状ナノ粒子に比べ(111)面が少ないので有機相-水相の二相系において(111)面の割合の少ない金ナノワイヤーと(111)面の多い金ナノ粒子の分離を試みたところ、ナノワイヤーを水相にナノ粒子を有機相に分離することに成功した。この1回の分離操作によりナノワイヤーの収率を90%以上まで向上できることがわかった。さらに、分離回数および使用する溶媒の種類を検討することにより、ナノワイヤーの収率を100%近くまで上げることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の予定通りAu,PtおよびPdワイヤーの作製とAuナノワイヤーと球状粒子との分離に成功した。さらに、分離回数および使用する溶媒の種類により分離能が向上できることもわかった。この分離能の向上は、当初の計画以上の成果であり、本研究は計画以上に進展しているものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
C18AAがAu(111)面に対する吸着能が低い選択的な吸着能を利用し、貴金属ナノワイヤーをAu(111)面から選択的に成長させる技術の開発に挑戦する。現時点では、金ナノワイヤーをAu(111)面から選択的に成長させることに成功しており、新たに白金、パラジウムナノワイヤーをAu(111)面から選択的に成長させることを試みる。また、研究が計画以上に進展しているため、当初の予定にはなかったがナノワイヤーの触媒の評価を行う。さらに、ナノワイヤーを合金化することにより新たな機能を持つナノワイヤーの作製が期待できるため、テンプレートを用いた合金ナノワイヤーの作製および触媒特性の評価についても挑戦する。
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