研究課題
魚類造血細胞の分化経路および分化を制御する分子機構の解明を目的として、本年度は主にカナダのAlberta大学のDr. Belosevic研究室にて研究を行った。当研究室では既にキンギョの造血前駆細胞から単球・マクロファージの分化を培養下で再現し、それを制御している造血因子が同定されている。本研究では他の血球系列の造血に関わる因子(エリスロポエチン(EPO)およびその受容体(EPOR)の組換えタンパク質を作製し、その機能を評価した。EPOは哺乳類において赤血球系の前駆細胞の増殖・分化および生存を促進する赤血球造血因子として知られる。本研究においてキンギョEPOは腎臓の造血前駆細胞に対し用量依存的に細胞増殖を誘導し、さらにGATA1やLmo2といった赤血球造血に関わる転写因子やEPORの遺伝子の発現を上昇させ、赤血球分化を誘導することが示された。さらに、半固形培地を用いたコロニー形成培養により、EPOは用量依存的に赤血球系コロニーを形成させ、赤血球前駆細胞の生存を促進させることが示された。さらにキンギョEPOR遺伝子を単離し、細胞外領域をコードする組換えEPORを作製してその機能を調べた。EPOとEPORのin vitro結合試験の結果、EPORは2量体を形成しEPOとの結合能を有することが示された。また組換えEPORをEPOとともに造血細胞培養系に添加したところ、先に述べたEPOの機能がEPOR用量依存的に阻害された。これらの結果から、キンギョEPOおよびEPORは赤血球系の造血因子およびその受容体として哺乳類と同様の機能を備えることが示され、赤血球造血機構が脊椎動物間でよく保存されていることが示唆された。以上のように単一の細胞系列でなく複数の血球系列の分化を再現することができる培養系を開発することにより、種々の細胞系列決定に関わる分子機構を解明するための強力なツールとなる。
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Developmental and Comparative Immunology
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