研究課題
(1)VGF遺伝子導入マウスの作製本マウスを作製することにより、様々な研究へ応用していく事を目的として実施した。現在、F1マウスまで作製することができている。今後は、RT-PCR法およびウェスタンブロット法を用いて、各臓器へのVGFの発現量の比較を行い、VGF/SOD1^<G93A>ダブルトランスジェニックマウスの作製に注力していく。(2)In vitro ALSモデル細胞の作製および本モデルを用いたVGFの薬効評価運動神経用細胞であるneuroblastoma-spinal cord-34(NSC-34)細胞に対し、ヘプラスミドベクターを用いてSOD1^<G93A>を過剰発現させることでin vitro ALSモデル細胞を作製した。本モデルを用いて、VGF誘導剤であるSUN N8075およびVGFペプチド(AQEE-30)を用いてSOD1^<G93A>誘発運動神経細胞死に対する保護作用を検討した。1)SUN N8075は、SODI^<G93A>誘発運動神経細胞死に対して保護作用を示さなかった。原因として、NSC-34細胞がSUN N8075に対して感受性が低いこと、またSUN N8075のVGF誘導率が低いことなどが考えられる。保護作用を示さない原因を追求していくこと、およびその原因に付随した本薬剤の改良がこんご求められる。2)一方、SOD1^<G93A>誘発細胞死に対するVGFペプチドの保護作用は0.01μMより認められた。さらに、VGFペプチドを添加することにより、細胞死は認められないが細胞の増殖能の低下が観察された。本データは、VGFの神経細胞保護作用を示唆するのみならず、細胞の増殖抑制・分化促進に関与していることを示した、新たな知見である。今後は、VGFペプチドの神経細胞保護作用メカニズムの解明を行うと同時に、分化に対する作用も検討していく。(3)運動神経細胞死に対するGPNMBの作用GPNMBのN末端部分ペプチドを添加すると、0.25μg/mLよりSOD1^<G93A>誘発運動神経細胞死を抑制することが明らかとなった。過去の報告より、細胞外GPNMBペプチド断片は、ERK1/2およびp38のリン酸化を亢進することが明らかとなっている。これらの知見より、GPNMBの受容体が存在することが推測される。さらにGPNMBノックダウンにより脊髄運動神経細胞(NSC-34)の増殖能および生存率が減少する事を確認した。(現在論文投稿中)
1: 当初の計画以上に進展している
当初の目標であるVGFトランスジェニックマウスは、現在F1マウスまで作製することができており、予定通りに進んでいると言える。また、NSC-34細胞を用いることにより、VGFの神経保護作用を示すことができたこと、さらにVGFが増殖抑制・分化促進に関与している新たな知見を示したことより、計画以上に進展していると判断した。
申請時に示した研究年次計画に基づき、(1)VGF/SOD1^<G93A>ダブルトランスジェニックマウスを用いた経時的脊髄組織の変化の観察(2)NSC-34細胞を用いたVGFの機能解析を検討する。また、本年度に得られた成果を基に、新たに示されたVGFの分化誘導作用を明らかにする試験を同時に並行して検討する。最終的に、VGFが運動神経をはじめ、神経細胞の分化誘導そして生物の発生に関与しているのか否かを突き止めていきたい。
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CNS Neuroscience and Therapeutics
巻: 17 ページ: 294-304
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http://www.gifu-pu.ac.jp/lab/seitaikinou/index.html