研究課題/領域番号 |
11J08473
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研究機関 | 岐阜薬科大学 |
研究代表者 |
中村 信介 岐阜薬科大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 網膜血管新生 / VEGF / 糖尿病網膜症 / Kallidinogenase / 高酸素負荷網膜血管新生モデル |
研究概要 |
1.糖尿病網膜症患者の臨床サンプルを用いた、kallidinogenaseのVEGF切断作用を検討 糖尿病網膜症の臨床サンプルを用いて、VEGFに対するkallidinogenaseの切断作用について検討した。糖尿病網膜症患者硝子対液サンプルに対して、抗血管新生作用を示す濃度になるようにkallidinogenaseを添加すると、免疫沈降法により切断されたVEGFを検出できた。KallidinogenaseがVEGF切断作用を介した血管新生抑制剤にない得る可能性が強く示唆された。 2.KallidinogenaseによるVGEF165切断部位の同定 Kallidinogenaseによって切断されたVEGF165を回収し、レーザーイオン化飛行時間型質量分析装置(MALDI-TOFMS)を用いてC末端アミノ酸配列解析を行った。KallidinogenaseがVEGFのアミノ酸の107番目もしくは108番目のリジンを切断していることが明らかになった。 3.VEGF165以外の血管新生関連タンパク質に対するkallidinogenaseの切断作用を検討 これまで病的血管新生関連タンパク質であるVEGF165に対するkallidinogenaseの切断作用について検討してきた。Kallidinogenaseの正常血管に対する作用を調べるため、生理的血管新生関連タンパク質であるVEGF121および血管新生抑制因子PEDF(Pigmentepithelium-derived factor)に対する作用を検討した。KallidinogenaseはVEGF121およびPEDFに対して切断作用を示さないことが明らかになった。また、kallidinogenaseと反応させても、VEGF121はVEGF受容体を活性化させ、網膜毛細血管内皮細胞の増殖および遊走促進させることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、各種血管新生関連タンパク質に対する作用の検討も行い、臨床サンプルを用いたVEGF165に対するkallidinogenaseの切断作用も明らかにすることができた。VEGF165に対するkallisinogenaseの切断部位の同定に関する試験において、当初予定していた実験から一定の成果は得られたが、完全な同定には到らなかった点で、"(2)おおむね順調に進展している。"を選択した。
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今後の研究の推進方策 |
申請時に示した研究年次計画に基づき、 (1)高酸素負荷網膜血管新生(OIR)モデルを用いたkallidinogenaseによるVEGF切断作用について検討する。 (2)Kallidinogenaseの点眼剤を作製し、OIRモデルを用いて、網膜血管新生抑制作用を検討する。 また、本年度に得られた成果を基に、マウスを用いて網膜正常血管新生に対してkallidinogenaseが作用を示すかどうかを検討する。In vivoモデルにより正常血管に対して抑制作用を示さないことを明らかにすることで、kallidinogenaseが副作用の少ない網膜血管新生抑制剤になり得ることを立証したい。 本年度において、kallidinogenaseがVEGFのアミノ酸において107番目あるいは108番目のリジンを切断していることが明らかになった。次年度では、本年度とは異なる酵素を用いた試験方法により、再度アミノ酸配列解析を行い、切断部位の同定を行いたい。
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