研究概要 |
本年度上半期は,私の研究テーマ「数値的アプローチによる衝撃波安定・全速度流体解析手法の研究」のうち,「衝撃波安定」という点について新規手法(SLAU法,SLAU2法)を提案し,その成果を論文や国際会議にて発表致しました.これらの手法は衝撃波を比較的安定に補足できる上に,既存手法のようなパラメタ依存性が無く,幅広い問題への適用可能性が期待されています.更にその応用として,我々の手法を適用して複雑形状における宇宙機空力解析や,非構造格子における新規手法の開発も行いました.こうした成果を他分野の研究者から招待を受けて発表する機会もございました.そして関連分野の国際会議では座長も務めました. 下半期からは,我々の手法の適用性を拡大し,より多くの問題に利用するため,アメリカ合衆国へ渡航し,NASA Glenn Research CenterのLiou博士と協力しながら混相流の研究を行っています.混相流では低速から高速まで様々な速度領域が存在するため,「全速度」に対応できる手法が望ましく,この性質を備えた我々の手法(SLAU法,SLAU2法)は有望と言えます.私は現時点でこれらを気液二相流に拡張し,例えば空気の流れの中に置かれた液滴に衝撃波が干渉する問題を解く事ができるようになりました.この成果は次年度の国際会議で発表し,いずれは論文としてまとめる予定です.一方で,混相流の解法そのものには未だ研究の余地があり,例えばLiou博士らが採用されている「二流体モデル」では二流体間の界面における圧力状態の与え方に課題がある事が私の行った数値実験から確認されました.残されたアメリカ滞在期間に,こうした課題に答えを見つけ,我々の手法をより良い形で世の中に広めたいと考えております.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(単相)流体の数値計算法の研究については順調に進み,空力加熱の精度の良い予測等が実現できた.Liouら「二流体モデル」を利用し,これを混相流に拡張する事も成功した.しかしながら,「二流体モデル」そのものにまだ制約があり,改良の必要がある事が明らかとなった.
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今後の研究の推進方策 |
今後も引き続き「二流体モデル」を利用した混相流の計算手法の研究を続ける。前年度の研究から,単純な二相流の解析においても「二流体モデル」そのものに改良の余地がある事が明らかとなった.このため,キャビテーションモデルの実装等により,更に実現象に近い二相流シミュレーションを行う事で既存モデルの課題をより明確化し,これを改良していく.
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