本研究では、adultでも血液脳関門を持たないといわれている脳室周囲器官の血管は未熟であるという仮説を立て、未熟脳血管で発現の高いコンドロイチン硫酸プロテオグリカンNG2と血小板由来成長因子受容体B(PDGFRB)の発現と、浸透圧刺激による血管構築変化を調べた。まず脳室周囲器官では、NG2及びPDGFRBが血管内皮細胞を取り巻くペリサイトに高い発現を示し、浸透圧刺激によってその発現量は増加した。また、脳室周囲器官の中でも特に血漿浸透圧調節に関わる脳弓下器官、終板器官において、浸透圧刺激によって血管内皮細胞とペリサイトの細胞サイズが増大し、低分子量物質FITCの血管透過性が増大した。これらの結果より、脳室周囲器官の血管系は未熟脳血管の持つNG2やPDGFRBを発現し、末梢情報の変化に従い血管構築を変え、血管透過性も変化することがわかった。また、本研究を進める過程で、脳室周囲器官ではadultでも持続的血管新生が起きていることに気付き、脳室周囲器官の正中隆起において血管内皮成長因子依存的血管新生が持続的に起きていることを発表した。この研究は脳室周囲器官がadultでも血液脳関門を持たないメカニズム解明につながると考えている。本研究に関連して、脳室周囲器官の血管透過性が部位によって異なることを明らかにした。また、シナプス可塑性マーカーのGAP-43について、初代培養神経細胞を用いてシナプス形成期における局在および発現変化を調べた。ラット海馬神経において、軸策上のパンクタにGAP-43の発現を認め、未熟なパンクタにはGAP-43の発現が高く、成熟したシナプスではGAP-43の発現は低いことを定量的に示した。これらの結果はGAP-43が未熟なプレシナプス終末に高い発現を示し、シナプスの成熟にしたがい、発現を低下することを示唆する。以上の結果を筆頭著者として4報め論文にまとめた。
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