研究課題/領域番号 |
11J08521
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
荒畑 恵美子 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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キーワード | 原子気体 / 超流動 / BCS-BECクロスオーバー |
研究概要 |
本研究はBCS-BECクロスオーバー領域での光学格子中Fermi原子気体超流動ダイナミクスを記述する新たな理論的枠組みの構築を目的としている。 その第一段階として、平成23年度は一様Fermi原子気体における原子対放出の解析を行った。 近年、BCS-BECクロスオーバー領域におけるFermi原子気体の実験が盛んに行われ、理論的にも広く研究されている。BCS-BECクロスオーバー領域における超流動の性質を理解するためには、その超流動を構成する原子対がクーパー対であるか二原子分子であるかを特定することが重要だが、原子対の特定に関する詳しい研究はまだ、多くはされていない。金属超伝導では、電子対の性質を調べる手段の一つとして、近年、二電子放出分光法が用いられている。この方法では二つの電子を同時に放出することによって電子対の性質を調べることが出来る。一方,Fermi原子気体では、BCS-BECクロスオーバー領域における光放出分光法による一粒子スペクトル密度の研究が理論、実験の両方から行われている。我々は二電子放出分光法に相当する実験も可能であると考え、解析を行った。今回我々は、二電子放出分光法に相当する原子対の放出を記述し得る表式を導出し、クロスオーバー領域における超流動を構成する原子対の性質を調べた。二粒子放分光法では、BCS極限では二つの個別原子の励起、分子ボソン超流動では分子の状態を保ちながらの励起が起こる。そのため、超流動における原子対の放出の流れ密度(DPE流)の角度依存性の計算結果より、クロスオーバー領域での超流動を構成する原子対の性質を明らかにし、光放出分光法を二粒子放分光法に拡張することで、BCS-BEC crossover領域での超流動の性質の解明の可能性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究はBCS-BECクロスオーバー領域での光学格子中Fermi原子気体超流動ダイナミクスを記述する新たな理論的枠組みの構築を目的としている。本年度はその土台となる結果が得られたが、これは研究計画通りである。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの結果を軸に、p波Feshbach共鳴の束縛状態における光学格子の影響及び、素励起における光学格子の影響について研究を行う。 始めにBEC領域でのp波Feshbach共鳴における束縛状態の解析を行う。次にBCS-BECクロスオーバー領域におけるp波のクーパー対(分子ボソン)の束縛状態を形成する散乱長に対する光学格子の影響を調べる。また、BCS理論を用いて、一様系Fermi原子気体のp波超流動における超流動秩序変数の符号の変化を、調べる。その結果とBdG方程式を組み合わせ、エネルギースペクトルを数値的に求めることで、素励起の性質とその安定性を調べる。
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