研究課題/領域番号 |
11J08559
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
伊東 佑人 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 超対称ゲージ理論 / AGT対応 / インスタントン |
研究概要 |
場の量子論においては、強結合領域の物理量や非摂動的効果を計算することは一般に困難であるが、4次元時空上の超対称ゲージ理論においては、そのような物理量がいくつか求められている。またそれらの一部は、2次元共形場理論の物理量と対応することが知られており、この対応は、4次元理論の物理量を今後さらに求めていくために有用である。 その対応の一つに、4次元時空R^4上の超対称N=2,U(2)ゲージ理論のインスタントン分配関数と、2次元共形場理論の一種である自由ボゾン場の頂点演算子とLiouville理論の頂点演算子のテンソル積の相関関数が一致するというものがあり、この予想を使うと4次元理論のS双対性が、2次元理論から予言できる点で有用である。 これの拡張として、R^4を離散群Z_2で割った時空(以下、A1-ALE空間)上で同じ超対称ゲージ理論を考えると、2次元時空上で、自由ボゾン場、アフィン代数、超対称Liouville理論のそれぞれの頂点演算子のテンソル積の相関関数と一致することが確認された。これに関して私は、当研究室の奥田拓也氏、カルフォルニア工科大の丸吉一暢氏、理化学研究所の瀧雅人氏と研究した。 ここで、A1-ALE空間上のインスタントン分配関数の求め方には2通りある。一つは、まず4次元時空R<4上でインスタントン分配関数を考え、その中から離散群Z_2で割った空間上においてもなお存在し得る場の配位からの寄与だけを抜き出してくる方法である。もう一つは、Z_2で割ったことによって原点にできた特異点を解消させるとP^1が現れるが、そこからの寄与を直接計算する方法である。両者の方法によって得られる結果には、ずれが生じる場合があり、そのずれは2次元理論の言葉で言うと自由ボゾン場の頂点演算子からの寄与の分に相当することが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
4次元超対称ゲージ理論と2次元共形場理論との対応を研究したことによって、4次元超対称ゲージ理論のインスタントン分配関数に関して今まで注目されてこなかった重要な点を明らかにすることができたので、当初の研究の目的はある程度果たせたと言える。
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今後の研究の推進方策 |
A1-ALE空間上のインスタントンは、3次元空間R^3上のモノポールと対応することが知られているため、上記の2つの求め方によるインスタントン分配関数のずれは、4次元時空S^1xR^3上の異なる種類の't Hooft loop演算子間の関係を得ることに利用できる。今後これについて研究する予定である。 また、4次元超対称ゲージ理論と2次元共形場理論との対応は、M理論における6次元的物体であるM5ブレインから示唆される対応だと考えられているが、M5ブレインから示唆される他の対応、すなわち2つの異なる3次元理論の間の対応や、2次元超対称ゲージ理論と4次元理論との対応についても研究する予定である。
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