2012年度は、ガバナンス改革が地方行政と地域住民の生活に与えた変化を把握することを目的に、主として、2012年6月の第3期行政区・地区評議会選挙の前後と9月の2回、カンボジアにおいて各政党の選挙集会と選挙運動の観察や、政党・行政・NGO関係者や地域住民への聞き取り調査を実施した。 地方(とくに郡レベル以下)においてはグッド・ガバナンスの概念が十分に浸透しているとはいえず、選挙の際に政治指導者が主張し、また有権者が重視するのは、ガバナンス改革の具体的な内容ではなく、「安定」と「開発」という抽象的な目標であった。地方行政機関の末端に当たる行政区・地区評議会が設置された2002年以降、行政サービスが徐々に向上してしているとの声は聞かれたが、NGO関係者を除けば、同評議会の透明性や説明責任、参加などに対する関心は、依然として低いことが明らかとなった。 また、前年度に引き続き、公務員の採用・研修を含む制度と実態に関する調査の一環として、公務員庁職員の協力を得て、公務員制度に関する各種法令や統計といった一次資料を入手し、公務員法など基本的な法令の翻訳を行った。 年次計画に示した以上の点に加えて、中国政治、ベトナム政治、ラオス政治を専門とする地域研究者たちと研究会を開催し、カンボジアを含む一党支配体制下にあるこれら4ヵ国のグッド・ガバナンスに関する比較研究を行なった。具体的には、4ヵ国のガバナンス改革をめぐる各国政権政党の動向や公務員制度、法整備状況などの整理や年表の作成を行ない、4ヵ国間の比較研究を可能にするための基礎資料の作成に従事した。この研究会への参加は、カンボジアの状況を相対化して考えるという点において非常に有益であった。
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