研究課題/領域番号 |
11J08630
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
吉成 優 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員DC1
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キーワード | ディドロ / 理想的モデル / 近代美学 / 美術批評 / サロン / 絵画論 / 美しい自然の模倣 / 百科全書派 |
研究概要 |
ディドロの模倣論の中心概念「理想的モデル」を中軸に据えて美学理論と美術批評の相関関係を捉え返すという本研究の目的を達するために、本年度(23年度)では「理想的モデル」説そのものの詳細な検討に取り組んだ。この研究は次の二項に大別される。すなわち、(1)『百科全書』の項目「美」や『劇詩論』など、初期(50年代)の論考を取り上げて「理想的モデル」説の成立過程を論じなおすものと、(2)「理想的モデル」説の中核をなす60年代後半以降の美術批評や演劇論(『サロン』、『俳優についてのパラドクス』)の再解釈を提示する考察とがそれである。このうち、後者の研究については本年度10月に開催された美学会全国大会(於東北大学)において口頭で発表を行い、学会参加者の方々から得られた貴重な意見を踏まえた上で、雑誌『美学』への投稿を準備している。また、前者の研究についても、来年度(24年度)6月に開催される日本18世紀学会(於名古屋大学)において口頭発表を行うため本年度3月に応募し、幹事会からの承認を得られることができた。 さらに本年度においては、フランス国立図書館にて一次、二次資料の収集につとめ、その成果を踏まえて、上記(1)(2)で対象とした年代の中間に位置する60年代前半の美術評論を取り上げ、その鑑賞体験がディドロの美学理論に対してどのようにフィードバックされていったのかという問題にも取り組むことができた。これは次年度における研究を先取りするものである。 また、本研究において計画している『サロン』の電子化についても、当初の計画どおり65年の『サロン』まで順調に電子テクスト化を終え、現在はサーバー等の技術的な問題を整備している段階にある。 上記のとおり本年度における研究は、当初の年次計画を順調に消化した上で、さらに次年度の研究のための準備も十分に成し得た点で、当初の計画を上回る進捗をみることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度においては、60年代のディドロの観賞体験と批評活動とが彼の美学理論に対してどのように反映されていったのかという次年度以降の研究計画の骨子となる問題に取り組むことができた。よって当初の計画以上に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度においては、まずディドロの「理想的モデル」概念の成立を捉え直すための研究を、6月の日本18世紀学会(於名古屋大学)において口頭で発表することが既に決定している。次年度の課題は、この時点で終えている二つの研究発表を論文化することが中心となる。さらに、60年代のディドロの観賞体験と批評活動とが彼の美学理論に対してどのように反映されていったのかという点に着目した研究についても年度中に公にする用意がある。また、この三つ目の研究を準備する中で、「理想的モデル」の模倣と相克をなす制作原理である「(詩的)熱狂enthousiasme」について詳しく論じる必要性が出来した。並行して取り組むことを計画している。
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