研究課題/領域番号 |
11J08644
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
武元 宏泰 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | siRNA / 制がん剤 / in vivo / グラフト共重合体 |
研究概要 |
本研究では、siRNAを合成高分子の側鎖にグラフト導入したsiRNA共重合体(siRNAグラフト共重合体)を用いて研究を進めている。siRNAグラフト共重合体では、単分子のsiRNAに比べて1分子当たりの電荷数が増加するため、ポリカチオンとの静電相互作用が増大する。結果として、ポリカチオンとの間でより安定なポリイオンコンプレックス(PIC)が形成可能であり、効率的な細胞取り込み、そしてそれに続く効率的な遺伝子発現抑制を達成可能としている。 平成23年度では、siRNAを用いた制がん治療を目差し、治療用配列を有するsiRNAを用いてPICを調製し、そのin vitroでのがん細胞の成長抑制能力を評価した。siRNAの配列としてPolo like kinase-1(PLK1)(細胞周期を制御するタンパク。発現を抑制することにより、細胞の増殖抑制やアポトーシスを誘導可能。)をターゲットとするsiRNA(siPLK1)を用いると、ヒト肺がん細胞(A549)に対して100nMのsiRNA濃度で80%近い成長抑制が観察された。同様の効果がヒト肝臓がん細胞(Huh-7)やヒト膵臓がん細胞(BxPC3)でも確認されており、siPLK1グラフト共重合体由来のPICにおける制がん剤としての可能性を見出した。 さらに、in vivoへの展開として、ポリエチレングリコール(PEG)とポリカチオンとのブロック共重合体を用いてsiRNAグラフト共重合体とのPIC形成を行い、PICの周りをPEGで覆ったPEG修飾PICを調製した。PEG修飾PICをマウスの尾静脈に投与し、血中のsiRNA濃度を定量することにより血中滞留性を観察したところ、単量体siRNA由来のPEG修飾PICは半減期にして10分程度であったのに対し、siRNAグラフト共重合体由来のPEG修飾PICは半減期にして50分程度の血中滞留性を達成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
in vitroにおいて治療標的を絞り込めただけでなく、in vivoにおける血中滞留性の向上までも達成できた。次年度における研究の基盤固めとしては極めて順調である。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度において絞り込んだ治療標的に対して、マウスを用いたin vivoでの治療実験を行う。実際の治療効果に加えて、薬剤の体内動態や毒性、副作用においても検討し、薬剤投与量と治療効果の最適化を試みる。
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