研究概要 |
本年度は、リアリスティックな数理モデルを開発するために必要となるミクロ回路の情報を抜き出す側面での研究を著しく進展させる事に成功した。申請者は、これまでMEG,fMRI,DTIとマクロなスケールでの脳のデータを計測してきたが、その最小な空間スケールは数ms程度である。我々は、多電極アレイを用いて神経細胞のスパイクを計測した。そのアレイ全体のサイズは1mmほどであり、そのアレイの電極間間隔は60μm程度である。このスケールは、丁度、これまでの計測では得られなかった情報を補間するサイズであるという明確な利点を有していたが、申請者にとって新規手法である点のリスクを伴っていた。ここに、我々が得た知見を以下に列挙する。 1.神経活動のスパイク情報から神経ネットワークの構造を再構成した。 2.in vivoのラットから計測したスパイクから因果的な情報伝達の方向性を解明した。 3.神経活動におけるCriticality仮説のより厳密な検証した。 これらは信頼性をもった数理モデルを構築するためには重要性は高い課題でありながら、その真偽は未知であった。そのため、自ら開拓するよりなかった点である事を明記しておく。それらと同時に、ラットにおいて脳破壊実験を実施しようと試み、共同研究先にインディアナ大学にて倫理委員会での受理手続きを済ませ、実験開始まで至ったが、共同研究者の財政的問題などから頓挫してしまった点も合わせて記録しておく。 マクロ系でのDTIデータの成果の1つをまとめた論文がCerebral Cortex誌(IF=6.844)にて発刊された。現在、マクロ系の研究においても新規解析も進めている。すでに新規な結果は得られ始めており、半年後には学会発表,論文投稿ができると考えている。
|