研究課題/領域番号 |
11J08677
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
川村 悠実 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 酸化亜鉛 / 薄膜トランジスタ / 原子層堆積法 / ディスプレイ |
研究概要 |
近年、フレキシブルディスプレイなどの次世代ディスプレイへの応用に向け、酸化物半導体が注目されている。現在、酸化物半導体薄膜の形成手法として、一般的にRFマグネトロンスパッタ法、パルスレーザー法等の手法が用いられている。しかしながら、これら従来の手法では、薄膜の形成時およびデバイス作製時に、高温での熱処理が必要となり、プラスチックなどのフレキシブル基板への形成が困難であるという課題があるが、この課題解決の糸口は未だ見出されていない。そこで、本研究では、この酸化亜鉛(ZnO)薄膜の新たな形成手法として、原子層堆積(ALD)法の適用を提案し、さらに、反応の活性化にプラズマを印加するプラズマALD法を用いることにより、高機能なZnO TFTの低温での作製の可能性を見出してきた。 ZnO薄膜形成において、酸化剤に対し印加するプラズマの条件を最適化することにより、100℃という低温で高品質な膜の形成が可能となった。さらに、このZnO膜をチャネル層として使用したTFTでは、これまで課題とされてきた、デバイス作製後の熱処理なしで高い電気的特性が得られた。 また、現在ディスプレイ用途で使用されているアモルファスシリコン(a-Si)のTFTでは、ゲート絶縁膜に、化学気相堆積(CVD)法などによる絶縁膜が用いられているが、この絶縁膜の形成にも400℃といった高温が使用されている。高品質なデバイスの低温作製に向け、この絶縁膜も低温で形成する必要がある。そこで、このゲート絶縁膜として、酸化アルミ薄膜を用い、ゲート絶縁膜にもプラズマALDの適用を検討した。その結果、従来ゲート絶縁膜として用いられてきたシリコン酸化膜を使用した場合に比べ、プラズマALDによる酸化アルミ薄膜を使用したZnO TFTでは、低温でより高い特性が得られることが分かった。 これらの結果は、高品質な薄膜の低温形成、および、熱処理なしでの高機能ZnO TFTの作製が可能となり、次世代ディスプレイへの応用に向けての大きな前進を示すものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的である、フレキシブルディスプレイへの応用に向けたZnO TFTの低温形成において、これまでにZnO薄膜の新しい形成手法としてプラズマ原子層堆積(プラズマALD)法を提案し、これにより、高機能なZnO TFTの低温での作製が可能となることを確認し、学会、学術論文等で発表を行ってきた。さらに、現在酸化物半導体のデバイス応用において課題となっている、高温の熱処理が必要である点においてもプラズマALD法による膜の形成が有効であることを示す結果が得られており、概ね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
本研究ではこれまでに、高機能ZnO TFTの低温作製に向け、従来の原子層堆積(ALD)法にプラズマを援用するプラズマALD法を提案し、高品質な薄膜の低温形成を図ってきた。その結果、プラズマALD法を用いることにより、高い電気的特性を持つZnO薄膜の形成が可能となり、また、これにより、ZnO TFTの低温での作成が可能となることを明らかにしてきた。今後は、更なる高機能化、および現在酸化物半導体において課題となっている、環境及び電気的ストレス下における信頼性の向上を図っていく。高機能、高信頼性を持つZnO薄膜の形成、ZnO TFT作製手法を確立した後、次世代ディスプレイへの応用に向けた、プラスチック基板へのデバイス作成を行う。
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