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2011 年度 実績報告書

戦後写真の日米間交流と「スナップ」写真の展開

研究課題

研究課題/領域番号 11J08775
研究機関東京大学

研究代表者

甲斐 義明  東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(DC2)

キーワード美術史 / 写真史
研究概要

当初の研究計画通り、「戦後写真の日米間交流と「スナップ」写真の展開」について作品調査および資料調査を行い、論文の執筆を進めた。研究成果の一部については美術雑誌『REAR』にて発表を行った。本研究は、日本の写真史において、手持ちカメラで撮影された瞬間写真を意味するスナップが独立したジャンルとして確立し、それが日本写真の伝統を形成していった過程について、その詳細を明らかにすることを目的としている。この目的を達成するために申請者は国内および国外で作品・資料調査を行った。その結果得られた知見のうち、次の二点が特に重要である。第一点目として、スナップの展開に果たした戦前の状況の重要性が挙げられる。スナップが写真ジャンルとして発展を遂げるのは戦後に入ってからであるが、その基本的な概念は1930年代半ばにはすでに用意されていたことが明らかになった。第二点目は、スナップの民衆芸術としての側面である。スナップの非芸術的ないわゆる「ヴァナキュラー写真」としての側面は当初から念頭に置かれていたが、資料の分析を通して、日本写真史の展開においてアマチュア写真家たちが果たした役割が、従来考えられてきた以上に大きいことが判明した。写真と、絵画や彫刻といったその他の伝統な媒体との差異については、これまで主に媒体の物理的性質(絵具とフィルム、絵筆とカメラなど)から説明されることが多かった。そのような状況のなかで、絵画や彫刻に比べたとき、写真はより多くの人々によって制作(撮影)されており、その点において、より広い階層の民衆参加を可能にする芸術であるという事実はこれまで過小評価されてきた。それに対して、本研究員によるスナップの歴史に関する研究は、民衆参加の可能性が写真という媒体の重要な特徴であることを示した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

申請書に記載した計画通り、「スナップ」写真史に関する作品および資料調査を進めることができ、新たな知見を得ることができたため。

今後の研究の推進方策

平成23年度の研究で得られた調査結果を元に論文の執筆を進めるとともに、個別の内容について追加調査を行う予定である。とりわけ、1)戦前の新興写真運動におけるスナップの位置、2)1950年代のリアリズム写真と生活記録運動との関係性、3)1990年代以降のスナップの展開、という三つの事項については、さらなる作品・資料分析の必要性が判明したため、それらに特に焦点を合わせて調査を進める。さらには、調査結果について学会等での口頭発表を行うことを計画している。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2011

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件)

  • [雑誌論文] アルフレッド・スティーグリッツの《イクィヴァレント》再考-第一次世界大戦後の風景表現との関連から-2011

    • 著者名/発表者名
      甲斐義明
    • 雑誌名

      美学

      巻: 238 ページ: 85-96

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 生き生きとした死者-ヘンリー・ピーチ・ロビンソンの芸術写真と死の表現2011

    • 著者名/発表者名
      甲斐義明
    • 雑誌名

      死生学研究

      巻: 16 ページ: 30-51

    • 査読あり
  • [雑誌論文] ジョン・シャーカフスキーの「ニュー・ドキュメンツ」展2011

    • 著者名/発表者名
      甲斐義明
    • 雑誌名

      REAR(リア)

      巻: 25 ページ: 52-55

URL: 

公開日: 2013-06-26  

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