研究概要 |
本研究を行うに際し,まずPlasmodium berghei,およびP. falciparumの培養法,系質転換法など基本的な実験手技の習得を行った.また,P. berghei, P. falciparumのRab5の抗体を作製,精製し,PbRab5a, PfRab5bについて特異性の高い抗体が得られた. Rab5bがPlasmodiumにおいて必須の遺伝子であるかを明らかにするため,P. bergheiを用いてRab5b knock out原虫の表現型解析を行った.その結果,PbRab5b knock out原虫が致死の表現型を示すこと,すなわちPbRab5bがマラリア原虫の生存に必須の遺伝子であることが明らかになった.また,PbRab5b-GFPがこの表現型を相補したことから,Rab5b-GFPが正常な機能を有していることが示された.PbRab5b-GFPの局在を観察したところ,メロゾイトからリング期においては1,ないし2個のドット状の構造が,トロホゾイト,シゾント期には多数の小さいドットが観察された.このドット状のオルガネラを特定するため,各種オルガネラのマーカーを入手した. また,Rab5bの機能に必須な領域を明らかにするため,顕著に保存された領域である脂質修飾部位とエフェクタードメインに注目して,他のRab5とのキメラ遺伝子による相補能検定を行った.特に脂質修飾部位に注目した結果,PbRab5b^<G2A>-GFP変異株は致死であるが,PbRab5b^<C3A>-GFP変異株は得られたことから,N末のミリストイル化は必須であるが,パルミトイル化は必須でないことが示唆された.また,トキソプラズマのRab5bによるマラリア原虫Rab5b knock out変異体の機能相補実験を試みたが,現在までに機能相補は確認されていない. この他,PbVps9タンパク質発現系の確立や,PbRab5b-GFPとTagRFPの二重発現による局在解析の確立を行い,今後の解析のための準備を整えた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
マラリア原虫を用いた実験手技の習得に予定以上の時間を必要としたため,当初の達成目標としたほどの研究成果は得られなかった.また,トキソプラズマ原虫のRab5bとマラリア原虫のRab5bの機能相補が確認できなかったため,当初予定していた実験計画を変更し,特定の種にのみしぼって研究を進める必要がでてきた.
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今後の研究の推進方策 |
本年度に確立した手法をもとに,実験材料をマラリア原虫のみとし,二重染色によるRab5bの局在解析を進める.これと同時に,Rab5b機能欠損変異体における細胞内輸送異常を特定することで,マラリア原虫におけるRab5bによって制御される輸送経路の特定を試みる.これと平行し,マラリア原虫においてRab5bと相互作用する因子の特定を試みる.コントロールとしてRab5bの活性化因子であることが期待されるPbVps9を用い,これとRab5bの相互作用が確認できる条件の検討を行う.
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