研究概要 |
ケイ酸・カルシウムイオン徐放型の軟骨修復材料の作製と、その基礎となる科学を明らかにすることをめざし、上記イオンの徐放担体であるシロキサン含有ベテライト(SiV)粒子中のアミノシロキサン含有割合による結晶配向性、化学耐久性制御について調査を行った。 シロキサン源としてアミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)のみ、および30~100mol%をテトラエトキシシラン(TEOS)に置換した混合シランを用い、SiV粒子を合成した。得られた粒子は全て約2~3wt%のシロキサンを含有した球状二次粒子であった。^29Si MAS-NMRにより、これらはAPTEs、TEosそれぞれに由来するシロキサンを仕込み比とほぼ同率で含有しており、T^1, T^2, Q^2, Q^3種に由来するシラノール基を豊富に含むことを明らかにした。 各XRDパターンから、APTES含有率が0~75mol%まで増加することに伴いI(004)/1(110)のピーク積分面積比(c/ab面比率)が増加することを見出した。またシリコン内部標準に対する各粒子のバテライト(112)面のピーク積分面積比はAPTES含有率に伴い減少し、非晶質炭酸カルシウムが増加することを見出した。 上述のSiVを生理pH緩衝溶液に浸漬した際、初期2hまでのケイ酸イオン溶出量、および浸漬24h後の総溶出量はAPTESの添加比率に伴って増加した。APTES由来のシロキサンはアミノ基の塩基性自己触媒作用により加水分解が早期に進行し、これらが初期のケイ酸イオン濃度増加に寄与すると考えられる。APTES : TEOS=70:30 (mol ratio)のSiVではカルシウムイオンの特異的な徐放を示す一方、他のSiVでは浸漬初期30minでの急激な濃度上昇を示すことを明らかにした。 これらより、(i)シロキサン中のアミノ基がバテライト一次粒子のc面へのシロキサン配位に主に寄与していること、(ii)SiV中のバテライトの溶解は結晶配向性、シロキサンの化学耐久性の2つに律速されることを明らかにした。
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