研究課題
本年度は主に本研究テーマの主要技術である波長フィルタの温度無依存化に向けて取り組んだ。LSIのロジック層は局所的に100度を超えるといわれており、LSI上にシリコンプラットフォームの光回路を集積する際に、波長信号の温度依存性が重要な課題となる。従来のSi細線導波路ではSi特有の大きな屈折率温度依存性により、フィルタ部において波長信号が不安定になってしまう。本研究ではこれまで、スロット導波路構造とポリマー材料を組み合わせることでSiプラットフォームでありながら、温度依存性を有さない構造を提案し実現してきた。その技術に関して本年度は、実用化に向けてスロット導波路の構造耐性の改善を行った。これまでの温度無依存スロット導波路構造は、従来のSi細線導波路の導波路との接続を考慮し、幅500nm、中央の溝が95nmと非常に繊細な構造としていた。これは電子線露光装置やドライエッチング装置を用いてパターンの形成を行うが、パターンが微小であるほど精確性が欠けてしまうという欠点があった。そこでスロット導波路幅を700nmに拡張し、温度無依存となるギャップ幅が235nmまで広げられる構造を再計算し、Si細線導波路との接続構造を設計した。その結果、波長シフト温度依存性としてはリング共振器型波長フィルタでは0.5pm/K、MZI型では-0.9pm/Kまで低減した。この値は100℃の温度変化に対しても0.1nm以下のシフト量に抑えることが可能であることを示し、長距離WDM通信で基準とされている100GHz(約0.8nm),50GHz(約0.4nm)でも十分実用的であると言える。
2: おおむね順調に進展している
本年度で温度無依存導波路構造を設計し実現した。これはおおむね研究上順調である。現在は次のステップとしてシステム化に着手している。
最終的には化合物半導体を用いた発光素子、光増幅素子との集積によりシステム化を図る。その点に関しては、本研究グループが別に推し進めている表面活性化接合技術を利用することになる。シリコン側としては光に信号を乗せる変調器が必要となり、スロット導波路構造を利用した変調器の設計・作製を行う。これまでのパッシブデバイスとは異なり、イオンインプランテーション技術や配線技術などが必要となるため、一つ一つプロセスを固めて進めていく。
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Photonic Devices using Nanofabrication Technology and Their Applications, IEICE Transactions
巻: Vol.E95-C ページ: 229-236
DOI:10.1587/transele.E95.C.229
Jpn.J.Appl.Phys.
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