研究課題/領域番号 |
11J08863
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
渥美 裕樹 東京工業大学, 大学院・理工学研究科(工学系), 特別研究員(DC1)
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キーワード | 温度無依存波長フィルタ / シリコンフォトニクス / ベンゾシクロブテン(BCB) / 波長トリミング |
研究概要 |
本年度は昨年度に設計・実現した温度無依存波長フィルタに関して、WDMシステムへの組み込みに向けて、必要技術の開拓を行った。シリコンフォトニクスに関しては光学特性の大きな構造依存性が課題となっており、所望の特性を得るためには素子構造形成後にその後さをフィードバックして補正する技術が必要不可欠である。通常、このような補正はデバイス上に電極ヒータを集積し温度調節で制御するが、本デバイスは温度無依存デバイスである為に、この手法が利用できない。そこで今回は、本研究技術の一つであるベンゾシクロブテン(BCB)の紫外線反応性に着目し、補正方法としての利用を検討した。 これまで他研究グループにより、BCBに紫外線を照射することで、ポリマーを構成する基が空気中の酸素と反応し屈折率変化を生じることが報告されており、この技術を用いた導波路も実証されている。今回、この手法を本温度無依存波長フィルタに導入し、DWM通信で設定されている信号波長と、波長フィルタの共振波長を一致するように波長シフトさせる研究を行った。マスクアライナを用いて波長254nmの紫外線を温度無依存デバイスに照射したところ、1.21nm(150GHz @1550nm帯)の波長シフトを観測した。この値はBCB自体の屈折率変化としては0.16%に相当する。同じポリマー材料に紫外線照射を行って波長シフトさせる研究の中では、トップレベルの波長シフト量となった。また、紫外線照射による温度無依存性や光学損失に対して劣化はなく、実用的な技術であると言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
システム化に向けて必要である波長トリミング技術が予想通り実証できた。 上記の点から、おおむね順調であると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
現在は今回の波長トリミング技術として、感光性BCBの導入を検討している。これにより通常のBCBと比較してより広範囲の補正が可能となる。今後は照射量依存性や・再現性・フィルタ構造依存性に関してデータベース化し、所望のシフト量を得られる環境を整えていく。また、WDM波長フィルタ構造の基本設計も行っており、実際に作製し動作実証をしていく予定である。
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