研究課題/領域番号 |
11J08937
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
越智 杏奈 北海道大学, 大学院・工学研究院, 特別研究員(PD)
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キーワード | 乳酸 / ポリヒドロキシアルカン酸 / PHA重合酵素 / バイオポリマー |
研究概要 |
平成24年度は、「配列の制御された乳酸ポリマー」を合成するため、優れたポリマー生産能力を有する乳酸重合酵素の取得、および乳酸ポリマー合成のための培養条件の検討を中心に研究を行った。 当研究室では、乳酸ユニットを重合することが可能な乳酸重合酵素を世界で初めて発見し、乳酸ポリマーの完全生合成系を構築している。最初に発見された乳酸重合酵素は、Pseudomonas sp.61-3由来のポリヒドロキシアルカン酸(PHA)重合酵素(PhaC1Ps)の高活性変異体(ST/QK)であり、乳酸と3HBの共重合体であるP(LA-co-3HB)を合成することが出来る。しかしながら、LAモノマーと3HBモノマーはランダムに重合されてしまい、配列制御は非常に困難であった。乳酸重合酵素(PhaC1Ps ST/QK)によるランダムな重合が酵素自身の性質であると考え、従来の乳酸重合酵素とは異なる性質を持つ新たな乳酸重合酵素を創出することを検討した。 天然では乳酸ポリマーの合成菌は見つかっていなかったため、高いポリマー生産能力を有する既知のPHA重合酵素に初代乳酸重合酵素(PhaC1Ps ST/QK)で得られた知見を用いて変異を導入し、ポリマー蓄積条件で培養を行った。その結果、いくつかの変異体において乳酸の重合が確認出来、新たな乳酸重合酵素の創出に成功した。また、本酵素によって生合成された乳酸ポリマーは、従来のPhaC1Ps ST/QKによるものとは異なる重合様式となっていた。 さらに、本酵素を用いてP(LA-co-3HB)を効率よく合成するために、大腸菌の培養条件を検討した結果、乳酸および3HBモノマーの供給の割合を調整することによって、ポリマー中の乳酸モノマー量およびポリマー合成量を向上させることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新規の乳酸重合酵素を創出し、従来とは異なる重合様式を持つ乳酸ポリマーを合成することが出来た。 さらに、大腸菌の培養条件を検討することによって、新規乳酸重合酵素での効率的な乳酸ポリマーの合成が可能となった。また、本研究のこれまでの成果を論文として報告し、国外および国内の学会で発表することが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
新規乳酸重合酵素を創出することが出来たが、ポリマー中の乳酸分率を一定範囲から上げていくことは難しく、得られるポリマーも物性解析等に用いるためにはまだ少ない。 今後、本酵素をさらに進化させる、および培養条件を検討することにより、これらの問題を解決していきたい。 また、新しい重合様式である乳酸ポリマーがどのような物性を持つのか調べていきたい。
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