研究課題/領域番号 |
11J08966
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
加納 伸也 東京工業大学, 大学院・総合理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 単電子トランジスタ / ナノギャップ / ボトムアップ / 金ナノ粒子 / 自己組織化単分子膜 / 走査トンネル顕微鏡 / 分子メモリ / ポルフィリン |
研究概要 |
分子デバイスは、単一の分子を利用することで素子のサイズを極限まで縮小しデバイスを高集積化することが可能である点や、デバイスの特性を分子によって一義的に決定できる点が期待されている。本研究では、リソグラフィー法に代表されるトップダウン手法と原子・分子からデバイスを組み上げるボトムアップ手法を組み合わせて、分子デバイスの作製を目指す。分子デバイスに導入する分子や金属ナノ粒子は、走査トンネル顕微鏡(STM)・走査トンネル分光(STS)を用いて電気的特性を評価する。分子デバイスの電極として、本研究ではギャップ長が5nm以下であるナノギャップ電極を無電解金メッキ法により作製する。作製したナノギャップ電極間に、STMによって特性を評価した機能性有機分子や金属ナノ粒子を導入し、単一電子動作やメモリ効果を持つ分子デバイスを作製する。 本年度は、単電子トランジスタ(SET)の室温動作をめざし、SETのクーロン島となる金ナノ粒子の粒径を変えて、SETの温度特性を測定した。我々はSETのクーロン島として、化学合成により精密にサイズ制御された金ナノ粒子を使用し、SETの動作温度を決定する帯電エネルギーを精密に制御することができる。5.2nmのコア粒径を有する金ナノ粒子を使用したSETでは160Kまでの動作範囲であったが、3.9nm,3.3nmのコア粒径を有する金ナノ粒子を使用したSETの作製を行うことにより、SETの動作温度がそれぞれ200K,220Kとなることを見出した。この結果について2011年秋季第72回 応用物理学会学術講演会で発表を行った。さらにケンブリッジ大学との共同研究において、金ナノ粒子の量子情報素子への応用を目指し、クーロン島としての金ナノ粒子の量子化準位の観察に成功した。本研究の結果について2012年春季第59回応用物理学関係連合講演会で発表を行った。また、昨年度行った、STMを用いたポルフィリン誘導体の単分子メモリ効果についての主著論文がApplied Physics Lettersに掲載され、Cover imageに採用された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
粒子サイズと単電子トランジスタの動作温度の関係を測定することで、室温で動作する単電子トランジスタの設計に対する指針を得ることができた。また、極低温下での電気的測定でクーロン島としての金ナノ粒子の量子化準位を観察したことにより、金ナノ粒子の量子化準位を利用したデバイスの作製といった展開が期待できるようになった。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、機能性有機分子とナノギャップ電極を用いた分子デバイスの実現をめざし研究を行っていく。より小さな金ナノ粒子を導入することで室温動作する単電子トランジスタを作製し、回路動作への応用をめざしていく。分子デバイスに関しては、STMで単分子メモリ動作を確認したポルフィリン誘導体をナノギャップ電極間に導入し、固体基板上で同様のメモリ動作の実現をめざす。また、本年度の研究で金ナノ粒子の量子化準位が観察できたことから、金ナノ粒子の量子化準位を利用したデバイスへの応用をめざす。
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