研究概要 |
平成23年度までに我々はボトムアップ手法を用いた単電子デバイスや単分子デバイスの実現を目標として、STMを用いることにより、1.8nmのコア粒径を有する塩基性有機分子に保護された金ナノ粒子が室温クーロンプロッケードを示すことや、金属錯体ポルフィリン誘導体分子が室温単分子メモリ効果を示すことを明らかにしてきた(S.Kano, et al., Appl.Phys.Express,3 105003(2010), S.Kano, et al., Ampl.Phys.Lett.100 053101(2012).)。 平成24年度はまず、ボトムアップSETの室温動作や量子情報素子への応用に向けた、SETの素子抵抗の低減に取り組んだ。SETの素子抵抗は理想的には量子化抵抗の数倍の数百kΩが理想であるが、従来のアルカンチオール分子保護金ナノ粒子を用いた場合、SET素子の抵抗値は数百MΩから数GΩであった。今回、保護基をアルカンジチオール分子に変え、化学結合に起因する抵抗値の低減をねらった。その結果、作製できた素子はアルカンチオール分子保護Auナノ粒子を使用した場合と比較して、抵抗値が数MΩに低減された。高周波測定を行う上で、SETの素子抵抗の低減は重要である。 次に、室温でメモリ現象を示す金属錯体ポルフィリン誘導体分子を、無電解金メッキされたナノギャップ電極間に導入し、固体基板上において室温単分子メモリ動作を示した。固体基板上においても室温単分子メモリ動作を示すことは、単分子デバイスを実用化するという観点で重要である。 また、昨年度行った、英国ケンブリッジ大学への海外渡航の成果であるSET特性における金ナノ粒子の量子化準位の詳細観察についての論文が、ACSNano誌に掲載された。
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