研究課題/領域番号 |
11J08967
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
荒井 美穂 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | グラフェン / 量子ドット / h-BN / バンドギャップ制御 |
研究概要 |
今年度行った研究は、(1)h-BN基板上グラフェン量子ドットの作製およびその電気伝導測定、(2)h-BN/2層グラフェン/h-BN構造の作製および垂直電界によるバンドギャップ制御である。 (1)近年、グラフェンをのせる基板をSiO_2からh-BNにすることで移動度が向上することが明らかになった。グラフェン単一量子ドットによって赤外光検出を行うためには移動度の高いグラフェンが必要であり、h-BN上にグラフェン量子ドットを作製しその電気伝導特性を調べることは重要である。グラフェンはバンドギャップが存在しないため、量子ドットへのキャリアの閉じ込めにはグラフェンを幅を数十ナノメートルに狭窄化したナノリボンにサイドゲートを付与した構造が必要である。しかしサイドゲートに電圧を印加してもグラフェンナノリボン部分におけるコンダクタンスが抑制されず、単電子トランジスタ動作を観測することができなかった。これはh-BNを介したゲートリークが生じているためであると考えられる。 (2)(1)の結果よりグラフェンナノリボンとサイドゲートを使ったh-BN上グラフェン量子ドットの作製は困難であることが分かった。この問題を解決するため2層グラフェンを使った高移動度グラフェン量子ドットの作製を計画した。2層グラフェンは垂直に電界を印加することでバンドギャップが形成されるため、ゲート電界によるキャリアの閉じ込めが可能となる。また酸素プラズマによるドライエッチングを使用しないので、エッジのラフネスが存在しないという利点もある。しかしSiO_2基板上では不純物の影響からコンダクタンスが十分に抑制されないという問題があった。そこで不純物の影響を軽減するためh-BN上に2層グラフェンを作製し、またゲート絶縁膜もh-BNを使用したh-BN/2層グラフェン/h-BN構造を作製し、垂直電界によるバンドギャップ制御の実験を行った。垂直電界によって抵抗値が増大するのを観測した。また同程度の電界において、SiO_2基板上デバイスよりも2桁以上コンダクタンスを抑制することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
h-BN上2層グラフェンにおける垂直電界によるバンドギャップ制御は世界で初めての試みである。なおかつSiO_2基板上よりもコンダクタンスを抑制できたことは、ゲート電界によってグラフェンナノ構造の作製が可能であることを示しており、グラフェンナノ構造の伝導特性のさらなる探究につながる重要な結果である。
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今後の研究の推進方策 |
h-BN上2層グラフェンでゲート電界によってグラフェン量子ドットを作製し、ランダウ準位に関する伝導特性を測定する予定である。また平行して、単一光子検出実験に向けて単一光子源の作製も行う予定である。
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