研究課題/領域番号 |
11J09001
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
伊藤 容子 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | ゴルジ体 / TGN / ライブイメージング / 植物 / 膜交通 / Brefeldin A |
研究概要 |
採用第1年度目までの研究により、タバコBY-2細胞では、BFA処理によって一部のcis槽マーカーが未知のドット状構造に局在し、この状態からBFAを除去すると、このドット状の構造体が集まることでゴルジ体の再形成が開始され、cis、medial、tmnsの順に再形成が進むことが明らかになった。また、このドット状構造は、ERESの非常に近傍に存在する独立したコンパートメントであると考えられた。これらの結果から、このドット状構造がゴルジ体再形成の足場となっており、植物には存在しないとされてきたERGICに相当する構造なのではないかと考えた。 第2年度目には、このドット状構造がゴルジ体マーカーの過剰発現によるアーティファクトでないことを証明した。以上の内容をまとめた論文は、Mol.Cell Biol.誌に受理された。 また、細胞分裂にあたってゴルジ体の数が倍加する様子を観察するため、BY-2の同調培養を行った。その結果、trans槽マーカーを伴わないcis槽マーカーのみのドット状構造や、非常に小さいが明らかな極性を持ったゴルジ体層板構造が、主にS期とG2期に存在することが明らかになった。これらが通常の層板構造へと成熟するのではないかと考えており、今後さらに詳細な観察を予定している。また、特に細胞板形成時にci5槽が他の時期に比べて大きくなることがわかり、これは細胞板形成のために細胞壁成分を大量に輸送するためなのではないかと考えている。 さらに、低濃度BFA処理により、TGNマーカーが多数の小胞に乗った状態で細胞質に拡散することが明らかになった。このとき、細胞膜から液胞膜へ至るFM4-64の輸送には影響がなかった。 また、ここからBFAを除去すると、TGNはゴルジ体の再形成が完了する前に独立して再形成を開始し、後からゴルジ体とTGNの会合が起こることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
採用第1年度目までに明らかにした内容にコントロールとなる結果を加え、論文にまとめて受理された。この結果を踏まえ、細胞分裂時におけるゴルジ体の新規形成メカニズムを明らかにするための実験を進め、後に通常のゴルジ体に成熟するのではないかと思われる構造が、限られた細胞周期で見られることを発見した。さらに、シロイヌナズナ個体における観察を行うための形質転換に着手できた。また、BFA処理と除去に対するTGNの挙動がゴルジ体とどのように関係しているかについて観察を進め、TGNがゴルジ体の単なる延長ではないものの、再形成時においてはゴルジ体と会合することが必要であるという示唆が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
・タバコBY-2細胞において、細胞周期のどこでゴルジ体の数が増加しているかを詳細に特定し、ゴルジ体が新規に形成される様子を捉える。また、その過程を様々なゴルジ体マーカーを用いて観察する。 ・BFA sensitive GNL1をgn11変異体に発現させたシロイヌナズナ個体において、様々なマーカータンパク質を用いてゴルジ体を可視化し、BFA処理を行う。これによって、植物個体においてもBY-2細胞で見られた現象が起こるか観察を行う。また、野生型シロイヌナズナ個体でもゴルジ体を可視化し、BFA処理とその除去に対する反応を組織ごとに詳細に観察する。 ・低濃度BFA処理によってTGNマーカーが小胞に乗ってサイトゾルに拡散する現象について、エンドソーム等他のオルガネラマーカーも用い、TIRFMやSCLIMによって詳細な解析を行う。
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