研究課題/領域番号 |
11J09019
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
箱江 史吉 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | ラムダ型五酸化三チタン / 光誘起相転移 / 光記録材料 / 薄膜合成 / 金属酸化物 |
研究概要 |
申請者が所属する研究室では、化学的なナノ微粒子合成によって新種の金属酸化物であるラムダ型五酸化三チタン(深青色、常磁性金属)を見出し、ベータ型五酸化三チタン(茶色、非磁性半導体)との間を室温で可逆的に光誘起相転移を示すことを報告している。本研究ではラムダ型五酸化三チタンの光記録材料としての有用性を示すことを目的として、これを薄膜化し光記録のデモンストレーションを行うことを目指している。平成23年度の研究実施計画はラムダ型五酸化三チタンの薄膜の合成及びキャラクタリゼーション、光誘起相転移の確認であった。 酸化チタンゾルを基板に塗布し、水素雰囲気下で焼成する薄膜合成手法について、合成条件の詳細な検討を行い、平滑な薄膜の合成に成功した。粉末X線回折パターン測定により、ラムダ型五酸化三チタンの生成を確認し、紫外可視スペクトルの測定により、ラムダ型五酸化三チタンの可視光領域での光学特性に関する知見を得た。薄膜に532nmのナノ秒パルスレーザーを照射し、照射部の深青色から茶色への色変化から、薄膜がベータ型五酸化三チタンへ光誘起相転移を示すことを確認した。 ラムダ型五酸化三チタンナノクリスタルの塗布膜については、基板にナノクリスタルを塗布する作業まで完了した。現在、詳細なキャラクタリゼーションを進めている。 本材料の光記録材料としての応用の観点から薄膜化は必要不可欠であり、また、学術的にも薄膜化によって粉末よりも詳細に光学特性や光誘起相転移の評価を行えると考えている。よって本成果は、今後の研究の進展の上での大きな成果であると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
酸化チタンゾルを用いる薄膜合成手法によって、ラムダ型五酸化三チタンの平滑な薄膜合成に成功し、光誘起相転移に伴う色変化を目視で明瞭に観測することが出来たが、一方でナノクリスタルの塗布膜については、塗布までは成功したがキャラクタリゼーションが不十分であり、以上のことからやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
酸化チタンゾルを用いて合成したラムダ型五酸化三チタン薄膜について、光照射部の粉末X線回折パターンの測定を行い、薄膜がラムダ型五酸化三チタンからベータ型五酸化三チタンへ光起相転移することを確認し、相転移前後の光学特性についても詳細に検討する。さらに、結果を論文化していこうと考えている。
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