研究課題/領域番号 |
11J09024
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
吹野 耕大 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | フェロセン / 面不斉 / 多関節ポリマー / 両親媒性 / 自己集合 |
研究概要 |
低炭素社会に向けた環境・エネルギー問題への取り組みとして、π共役系有機半導体を用いた有機エレクトロニクスは、有機薄膜太陽電池の開発などとも関連してますます重要になっている。本研究では、「折りたたみ」を利用してドナー(フェロセン部位)とアクセプター(π共役系有機分子部位)のヘテロ接合構造を構築し、高性能な光導電性材料や有機薄膜太陽電池の設計に展開する。本年度はその第一段階として、両親媒性を有する多関節ポリマーを設計・合成し、その溶液中における折りたたみ挙動について解析を行った。モノマーに対して0.1当量の塩化銅(I)とTMEDAを空気下で加えることにより、目的のフェロセンポリマーを高収率で得ることに成功した。1H NMRによる末端解析およびゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により、フェロセンユニット換算で17量体相当の平均分子量をもつポリマーであることがわかった。このポリマーについて、溶液中で紫外可視吸収(UV-Vis)スペクトルと円二色性(CD)スペクトルを測定したところ、このポリマーは溶媒の極性、温度、濃度に応じて、折りたたみとそれに伴う自己集合を行うことが明らかとなった。さらに、このポリマーの集合体の形状を調べるため、透過型電子顕微鏡(TEM)及び原子間力顕微鏡(AFM)により集合構造の観察を行った。その結果、溶液中においては、この多関節ポリマーは50-200nm程度の球状構造を形成していることがわかった。また、分子レベルでのパッキングについて調べるため、貧溶媒添加により析出させた固体に対してX線回折法(XRD)による解析を試みた。小角側の反射ピークのパターンから、この集合体は37.3Åの間隔をもつラメラ状構造をとっていることが示唆された。我々の狙いどおり、多関節ポリマーの折りたたみと、その相分離による層状構造の形成が達成できている可能性が高いと見ている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多関節ポリマーの溶液中での挙動についての基本的な知見について多くの情報が集まりつつある。また、有機半導体としての利用によりふさわしいと思われる構造を形成するための新しい分子についても合成が進んでいる。しかしながら、現在のところ、無溶媒状態におけるポリマーの折りたたみ構造及びパッキング構造を明らかにするところまでは進んでいない。
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今後の研究の推進方策 |
目的のヘテロ接合構造の構築のため、より適すると考えられる分子の合成を引き続き進めていく。また、固体状態における性質を示差走査熱量測定(DSC)、吸収特性、発光特性、円二色性により明らかにしてく。さらに、SPring-8の放射光施設(理化学研究所の高田グループとの共同研究)を利用し、得られた固体薄膜中の長距離秩序構造を評価することを計画している。
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