研究課題/領域番号 |
11J09109
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
板垣 真太朗 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 電子 / ヘテロポリ酸 / 水素吸蔵・放出 / 白金 / プロトン |
研究概要 |
本申請研究では、「ポリオキソメタレートのプロトン-電子貯蔵伝導特性を基盤とする高機能デバイスの創製」を目的とした。 ヘテロポリ酸と貴金属前駆体の水溶液の溶媒を除去し、水素雰囲気下で還元処理を行うことによりヘテロポリ酸-貴金属ナノ粒子複合体を調製した。複合体のIRから複合化後もヘテロポリ酸の構造が保持されていることが明らかとなった。ケイタングステン酸-白金複合体(Pt/SiW)のTEM測定を行ったところ、平均粒子径7.0±2.3nmの白金ナノ粒子がSiW表面に高分散担持されていることが明らかとなった。 貴金属の効果を検討した。水素吸蔵速度は貴金属表面での水素の解離吸着エネルギーの序列を概ね一致した。また、水素吸蔵速度と量がPtの担持量に依存しなかったことから、水素はヘテロポリ酸のバルク内に吸蔵されていることが明らかとなった。ヘテロポリ酸の効果を検討したところ、水素吸蔵量はヘテロポリ酸の酸化還元電位の序列と一致した。特に、Pt/SiWでは吸蔵された水素は(水ではなく)すべて水素分子として放出可能であることが明らかとなった。これは、SiWの酸化還元電位が0V(vs.NHE)に近いためであると考えられる。Pt/SiWの水素吸蔵・放出サイクルは性能の低下なしに少なくとも6回繰り返すことが可能であった。 各種in situ分光測定から、水素吸蔵・放出サイクル中では、SiWの相と格子定数、および、α-Keggin構造が完全に保持されていることが明らかとなった。また、UV/VisとIRスペクトルからSiW内に水素がプロトンと電子として吸蔵されていることが明らかとなった。速度論解析の結果、Pt/SiWにおける水素吸蔵はPtナノ粒子上での水素の解離とそれに続くプロトンと電子のSiWバルク内への拡散により進行することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度において、水素をプロトンと電子として貯蔵するというこれまでにない水素吸蔵法を立案し、ポリオキソメタレートの特長を巧みに利用した材料設計によりこのコンセプトを世界で初めて実証した。水素をプロトンと電子として貯蔵することで、吸蔵・放出速度の大幅な向上、材料の耐久性の向上など従来法と比べて優れた利点を有することも明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
ケイタングステン酸-白金複合体において成膜を行う。具体的には、(a)多孔性α-アルミナ、シリカなどの基板上に粒子成長させる、(b)超高圧でペレット化する、(c)導電性を有するカーボンなどと複合化させホットプレスを行うといった方法を用いる。水素透過膜としての性能評価を水素/窒素分離比、透過流束などから評価する。また、ヘテロポリ酸-貴金属ナノ粒子複合体の固体触媒への応用を検討する。担持された貴金属と担体であるヘテロポリ酸との協奏効果(例えば、ヘテロポリ酸由来の多電子供与能、酸性質、酸化能と担持された貴金属種由来の性質)を利用した新反応、ワンポット反応系の開発を目指す。
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