研究課題/領域番号 |
11J09130
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中島 一成 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 有機合成 / 光誘起電子移動 / ラジカル / 付加反応 / 酸化 / 還元 / アミン / イリジウム錯体 |
研究概要 |
アミンの窒素原子に隣接するsp3 C-H結合の直接的な官能基化は、含窒素化合物を合成する有用な手法である。このための手法として、アミンの二電子酸化によるイミニウムイオンを鍵中間体とする反応は広く研究されているのに対し、一電子酸化により生成するαアミノアルキルラジカルは反応活性種として期待できるにもかかわらず、その利用は非常に限られている。一般にαアミノアルキルラジカルは反応性が高いため、化学量論量の酸化剤が必要な熱的な反応条件下では速やかに酸化されイミニウムイオンへと変換されてしまう。一方、光誘起電子移動に基づくアミンの酸化では条件を制御することでαアミノアルキルラジカルが生成することが知られている。しかし、その利用は紫外光を用いた反応系で数例報告されているのみであり、また、適用可能な基質が限られているなど有機合成的に有用な反応ではなかった。 今回、私は遷移金属ポリピリジル錯体を光電子移動触媒に用いることで、可視光照射下でのαアミノアルキルラジカルの生成と、その電子不足アルケンへの付加反応の開発に成功した。この反応系では、極めて広範なアルケンおよびアミンが適用可能であり、高収率で目的生成物が得られた。この反応系では、これまで溶媒量を必要としたアミンをほぼ等量にまで低減することができた。また、紫外光を用いる系では適用できなかった芳香族アミン類が適用可能であった。 また、本反応については、反応機構の解析を行うことで、従来法とは異なる反応機構により進行していることを明らかにすることができた。従来法においては、光が反応の開始段階にのみ関与するラジカル連鎖機構に基づく反応であったが、本反応では光による電子移動を鍵として連続的な酸化還元機構により反応が進行している。この結果は、新たに光電子移動触媒の概念を導入することにより、従来法の問題点を解決することができたことを示している。そのため、本研究は独創的で極めて価値の高いものとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究を行なっていく過程で、当初設定した目標よりも重要かつ意義のある研究課題にアプローチできることを示唆する結果が得られた。そのため、研究目標を再設定し、一層高レベルの研究課題を遂行することができた。また、その結果を当該分野できわめて高い評価を受けているJournal of the American Chemical Society誌に投稿、掲載することができた。
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今後の研究の推進方策 |
現状を維持し、得られている実験結果を基礎として、これまでに確立した系の拡張を目指す。
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