研究課題/領域番号 |
11J09134
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研究機関 | 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
山田 真弓 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所・病態生化学研究部, 特別研究員(PD)
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キーワード | てんかん / 海馬 / 抑制性神経細胞 / 細胞表面認識分子 / 樹状突起 |
研究概要 |
イハラてんかんモデルラット(IER)は、てんかん症状を呈する原因不明の自然発症ラット突然変異体であり、その遺伝形式は常染色体劣性遺伝である。IERでは生後3ヶ月後からピクピクと不自然な筋肉収縮が認められ、生後5ヶ月から激しいてんかん発作を示し、生後1年前後で死に至る。以前の我々の解析により、IERには、海馬肥大と網膜層構造障害等の神経系の発生異常が認められた。しかし、その原因遺伝子については不明であった。本研究では以下の点について調べることによって、IER原因遺伝子産物が神経回路網形成に果たす役割について調べ、将来的にはIERの表現型の解析を基にてんかん発症メカニズムの解明を目指している。 i)IER原因遺伝子の確定;連鎖解析で狭められたゲノム領域を、大規模シークエンサーを用いてすべて読み、IERで原因遺伝子にどのような異常があるのか調べた。 ii)IER原因遺伝子産物の発現解析;原因遺伝子産物は細胞表面認識分子であった。その原因遺伝子産物に対する抗体と各種細胞マーカーとの免疫二重染色を行い、この分子の大脳・海馬における発現細胞を同定した。 iii)IER原因遺伝子産物の分子機能の解析;子宮内エレクトロポレーション法を用いて、胎児期のマウスの海馬へと原因遺伝子を導入し、その表現型を解析した。その結果、樹状突起形成不全が観察された。また、IER原因遺伝子産物の分子としての接着・反発性を調べるために、L細胞へ原因遺伝子およびそのファミリー遺伝子を強制発現させ、細胞の接着状況や細胞間の距離について調べることによって、分子間接着あるいは反発への寄与について検討中である。また、海馬初代神経細胞に、原因遺伝子のshRNAやcDNAを導入し解析を行った。この結果でも、樹状突起の形成異常が見られ、上記L細胞の実験結果と合わせて、IER原因遺伝子産物の機能を推定する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
イハラてんかんモデルラット(IER)の原因遺伝子が確定できたので、次にその原因遺伝子産物の発現解析を行った。この分子に対する抗体を作製し、種々の神経細胞あるいはグリア細胞マーカーとの免疫2重染色を行い、予定通り、大脳、海馬等における発現解析を行うことができた。さらに、子宮内エレクトロポレーション法を用いて、大脳あるいは海馬へ原因遺伝子を過剰発現させることによって、その原因遺伝子産物の機能解析を行っている途中であるため、計画通り順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は引き続き、子宮内エレクトロポレーション法を用いて、IER原因遺伝子産物の機能解析を行う。それと同時に、IER原因遺伝子のノックアウトマウスを入手したので、このマウスを用いて、表現型解析を行う。さらに、原因遺伝子産物の候補結合分子の発現、結合実験を行い、原因遺伝子産物ファミリー分子が作用する分子機序を調べる。さらに、IER原因遺伝子のファミリー遺伝子の突然変異体マウス(自然発症)も入手しているので、このマウスについても同様の解析を行う。このファミリー分子との関連を調べることによって、多様な神経回路網がいかにして精緻に構築されるのか、理解を深める。さらに、IER原因遺伝子ノックアウトマウスにおいて、IERと同様なてんかん発作がおこるかどうかについて出生数ヶ月後を観察する。
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