研究概要 |
本研究の目的は、サフラマイシンA(SFM-A)生合成遺伝子群を出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)にて異種発現させることで、安価かつ簡便にテトラヒドロイソキノリン類の大量合成を行うことである。 平成23年度までの研究成果として、申請者はsfm生合成遺伝子のうちsaframycinAの合成に必要であると考えられるsfmA,B,C,D,M_1,M_2,M_3,O_2を出芽酵母へと導入することとした。これら合計8つの生合成遺伝子群を発現させるべく、異なる栄養要求性を利用する4つのプラスミドのコンストラクトを作製した。 平成24年度においては、実際に8つのsfm生合成遺伝子群を導入したS.cerevisiaeを培養し、その生産化合物について解析を行った。コントロールとして遺伝子群を含まないベクターのみを導入したものを用意し、生合成遺伝子を導入したものと比較すると、遺伝子発現誘導後、24時間の時点で、UV254nmの吸収において大きな違いが見られた。sfmABによって合成されることが期待されたmyristoyl-Ala-Glyの分子イオンに相当するm/z値を抽出すると、それに相当する化合物の生産が確認され、合成標品との比較からも本化合物が合成されていることが確認できた。さらに、sfmCにより1分子のチロシン誘導体が縮合し、Pictet-Spengler反応を行った化合物についても、その分子イオンピークを確認した。さらに遺伝子発現誘導後48時間後では、もう1分子のチロシン誘導体が縮合し、2回目のPictet-Spengler反応による環化が行われたと考えられるN-myristoyl-presaframycinに相当する分子イオンピークが得られ、またメチル基の導入および水酸基の導入によりキノン環へと変換されたN-myristoyl-safracinBに相当するMSフラグメントが存在していることも確認できた。 さらに申請者は、本システムにおいて新規化合物を創出するため、新たな遺伝子資源として、平成24年度より糸状菌由来遺伝子の活用も試みている。日本農芸化学会2013年度大会および日本薬学会第133年会にて、これらの成果を併せて発表した。
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