研究課題/領域番号 |
11J09337
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
田畑 俊行 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 電子デバイス / 半導体物性 / 表面・界面物性 / 半導体超微細化 / ゲルマニウム / 高誘電率ゲート絶縁膜 |
研究概要 |
Ge MOSFETの高いポテンシャルに関しては、本研究の代表研究者の受入先(大学院博士課程在籍時の研究室)において、すでに多くの成果を示してきた。しかし、ゲート絶縁膜の薄膜化に関しては、まだ大きな問題を抱えているのが現状である。本研究の代表研究者は、平成23年度の研究内容として以下のことを行った。まず、次に示す三つの方法によってGe基板上のMOSFETの薄膜化を狙った。(i)GeO_2の薄膜化、(ii)High-k酸化膜による界面適合性、(iii)酸化物以外の可能性の探索。このうち、(i)については、GeO_2の薄膜化に伴い、High-k膜へのGe拡散の影響が増大してMISキャパシタの電気特性を劣化させることを示した。また、GeO_2中のHigh-k金属元素がGeO_2/Ge界面の構造緩和に寄与し、界面特性に大きく影響することを示した。これは、交付申請書に記載された「High-k/Ge界面の材料物性の理解と界面欠陥制御」の目的において一定の成果を上げたと言える。さらに(ii)について、界面の熱的安定性およびギャップ内準位形成に関して調べ、酸化物とGeの界面反応性が高い場合(希土類酸化膜)には、低誘電率層の形成が顕著であり、一方反応性が低い場合には(Al_2O_3)酸素透過性が低い分だけ良質な界面が得られない傾向があることを示した(2011年9月国際固体素子カンファレンス(SSDM)で報告)。最適化の余地はあるものの基本的な限界を示した重要な成果である(SiO_2換算膜厚として0.5nmを目標としており上記の限界はかなり本質的である)。以上(i)(ii)は、交付申請書の実施計画の(1)(2)によって得られた。また、新たな展開として、(iii)の取り組みが挙げられる。Ge基板上の新たなゲート絶縁膜材料として現在窒化物系薄膜を検討した。これはGeに対してO_2とN_2とでは振る舞いが全く異なる点に着目したもので、初期的な結果としてはかなりよい特性を得ており(2012年3月応用物理学会で発表)、極めて斬新な試みである。来年度はこの部分について徹底的に調べ、Ge界面のミクロ及びマクロの理解に基づく界面制御技術として成果をまとめる計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
従来の高誘電率(High-k)酸化物薄膜/ゲルマニウム界面における材料物性的理解・制御に一定の成果を得たことと、そこからの新たな展開として窒化物/ゲルマニウム界面に着目し、これまでにない新しいHigh-k1ゲルマニウム界面の物性理解・制御技術の確立に可能性を示し、初期的な実験データとして良好な結果を得たことによる。
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今後の研究の推進方策 |
窒化物/ゲルマニウム界面の熱力学および材料物性について、窒化アルミニウム薄膜(AlN)を主に研究対象としながら徹底的に調べ上げる。これにはまず、AlN膜厚を変化させた昇温脱離測定(TDS)により、AlN/Ge系からのN2脱離に関するデータを多く集めることが必要であると考えている。また、これに加えて必要な物理分析(TEMおよびSIMS)を利用しながら、界面現象を明らかにしていく。最終的には、制御されたAlN/Ge界面を用いたGe-MOSFETを作成し、従来のデバイス特性との比較から、窒化物/Ge界面の材料的本質を明らかにしたいと考えている。
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