研究課題
3年間の目標は、幹細胞独特な遺伝子発現抑制系と、この系が関与している遺伝子群の網羅的解析にある。初年度として、確実な目標遂行のための基盤的研究を行った。これまでの研究成果から、前駆細胞ではDNAメチル化機構が担っている遺伝子発現抑制システムが幹細胞においては存在せず、代わりに、Plzfという転写因子が介在する遺伝子発現抑制系が、その役割の一部を担っているのではないかと推測している。そこで1年目は、Plzfと相互作用するタンパク質群をプロテオーム解析により明らかにするための足掛かりとして、タグ付きのPlzfをGS細胞に導入するためのレンチウイルスベクターを作製している。このベクターが完成すれば、非常に優れた抗タグ抗体が存在するので、免疫沈降法によりPlzfを含むタンパク複合体を精製することができる。加えて、Plzfのゲノム上における結合領域を明らかにするために行うクロマチン免疫沈降-シークエンスの準備として、抗Plzf抗体によるクロマチン免疫沈降法の条件検討を行い、少数の細胞からでも良好な沈降結果を得ている。また、これまでの研究成果をより発展させるために、whole genomeにおけるDNAメチル化の状態を幹細胞と前駆細胞で比較する準備として、解析に必要な細胞集団をセルソーターによりマウス精巣から取得し、それらの細胞の品質管理を順次行っている。さらに、網羅的解析のためのコントロール実験として、いくつかの遺伝子領域、繰り返し配列などのDNAメチル化状態をBisulfite Sequencing法により解析した。
3: やや遅れている
これまでの研究成果を発展させるとともに、先を見据えた準備を行うことができた。しかしながら進行度合いとしては、当初の目標よりは若干遅れ気味であるので、さらに努力を続けていきたい。
当初の研究計画では、ChIA-PET法により、核内のクロマチン高次構造を明らかにする予定であったが、学会に参加してChIA-PET法のより詳細な情報を得たところ、非常に多くの細胞を必要とし、実験系としても不安定な部分が多いことが分かった。そこで、PlzfのChIP-Seqのデータと3C-PCRのデータを組み合わせることで対処したいと考えている。使用する方法論は異なるが、核内のクロマチン高次構造から幹細胞の特徴をとらえたいという目標には変更はない。
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Development
巻: 138 ページ: 4207-4217
doi:10.1242/dev.064444