研究課題/領域番号 |
11J09368
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
三浦 貴司 信州大学, 総合工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 余剰次元 / 超対称性の破れ / 標準模型を越える物理 |
研究概要 |
本研究の目的は『標準模型を越える物理の可能性として、時空構造の効果を採り入れた現実的な統一模型の構築を探求する。』ことである。現代の素粒子物理学において標準模型はほぼ確実にその正しさが実験的に検証されている。現在稼働中のLarge Hadron Collider(LHC)において標準模型で唯一未発見であったHiggs粒子の探査が行われており、その先には超対称性という新しい物理の発見の可能性を秘めている。しかし、標準模型や超対称標準理論だけでは理解できないいくつかの問題も存在する。本研究では、「超対称性の破れの起源」に着目した現実的な統一模型の構築を目指す。特に、4次元時空に余剰な空間構造を加えた余剰次元模型や超弦理論のような高いエネルギースケールでの理論から導かれる有効理論の解析を行うことで、超対称性の破れの起源が時空構造の違いに由来する可能性を研究する。 今回、超対称性の破れに関して、どの段階(エネルギースケール)で破れが引き起こされるかについて、余剰次元模型の観点で研究した。この下で超対称性の破れを特徴付ける重要なパラメータであるソフトに超対称性を破る項とμ項の生成・導出の機構について探った。実際には、MSSMを基礎として、余分なU(1)ゲージ対称性が存在する場合についてそれぞれ異なる模型で議論した。細谷機構に基づいて、量子レベルでの有効ポテンシャルの極小値を調べることにより、余剰次元成分のゲージ場の真空期待値は決定される。このようなゲージ場と結合する場は、有効ポテンシャルに影響を与えると同時にこのゲージ場の真空期待値に比例する質量を獲得する特徴を利用し、ソフトに超対称性を破る項とμ項の導出を行った。 本研究は、従来の超対称性の破れを扱った理論では実現しないような超対称性の破れの機構やμ項の生成機構を提案したという点が重要であり、意義があると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた研究内容である「超対称性の破れの起源」について、超弦理論など高いエネルギースケールを念頭にした有効理論としての余剰次元模型の立場から新たな超対称性の破れの描像を提案した点で、おおむね順調に研究が進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の今後の推進方策として、世代構造の起源と時空の幾何という観点での現実的な統一模型の探求を行う計画である。世代構造はゲージ対称性などの内部対称性によって記述されているのか、時空の構造そのものが関係しているのかを明らかにしたいと考えている。
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