研究課題/領域番号 |
11J09376
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
國見 昌哉 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 超流動 / 超流動固体 / ボース・アインシュタイン凝縮 / ソリトン / ボゴリューボフ励起 |
研究概要 |
超流動固体という超流動性と固体としての性質を両方を持つ状態について現在活発な研究が行なわれている。しかしながら、実験的に超流動固体が実現したという報告ない。私は、固体秩序が超流動性にどのように影響をするかという点について研究を行なった。特に、流れを阻害するような障害物が存在するときの流れの安定性やダイナミクス、超流動固体の励起状態について研究を行ない、以下の結果を得た。 (1)障害物があるときの超流動固体の超流動性をジョセブソン効果を用いて見るという研究を行なった。先行研究によると、2次元の障害物がある系においては超流動を示さない。しかし、私は1次元系においてジョセブソン効果がおきることをグロスピタエフスキー方程式を用いて示した。ジョセブソン効果の存在から1次元の超流動固体は障害物が存在しても超流動性を示すことが言える。このことは高次元系においてもジョセブソン効果が起こる可能性があることを示唆している。実際に、2次元系において先行研究とは異なる形の障害物を用いたときにジョセブソン効果が起きることを確認した。 (2)超流動固体の障害物があるときの臨界速度以上のダイナミクスを調べた。超流体の場合には、障害物のまわりから量子渦やソリトンが周期的に放出されるという現象が理論的に知られている。私は1次元超流動固体の場合に、グロスピタエフスキー方程式を用いて、ソリトンの周期的な放出が起きることを確認した。また、ソリトンの放出周期が超流体のものと異なるスケーリング則に従うことも見出した。 (3)2次元における超流動固体の励起スペクトルをボゴリューボブ方程式を用いて調べた。その結果、低エネルギー励起にボース・アインシュタイン凝縮に起因するボゴリューボブモードに加え、併進対象性の自発的破れに伴うフォノンモードがあることがわかった。また、有限の流れがある状態にも励起スペクトルを求め、安定性解析を行なった結果、超流体相、超固体相、ストライプ相が安定に存在し、これらの相の間の転移の次数を決定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
申請書に記載した研究はほぼ予定通り進展し、さらに、本年度の予定にはなかった超流動固体の励起スペクトルについての研究を行なうことができたから。
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今後の研究の推進方策 |
2次元の障害物があるときの超流動固体の超流動性を数値的、解析的なアプローチを用い、先行研究と異なった結果になった物理的理由を明らかにする。大規模な数値計算を行なう可能性があるので、その場合には計算機を購入する。 2次元の超流動固体のダイナミクスについて研究を行なう。特に、超流動固体中の量子渦についての研究を予定している。 他に、長距離秩序の観点から類似性がある超伝導体中の渦糸格子の研究を予定している。
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