研究概要 |
研究テーマ名に「銅酸化物の研究を基盤とする新規超伝導体の設計指針の構築」とあることから、採用初年度は、まず銅酸化物の超伝導を説明する理論をより詳細にした。具体的には、Hsakakibara et al., Phys. Rev. Lett. 105, 057003 (2010).で既に説明した、2軌道模型による計算結果についてより深く調べ、超伝導の物質依存性が起こる理由を明確にした。その成果をPhys. Rev. B 85, 064501 (2012)(editor's suggestion)にまとめた。その中で、 (1)dz2軌道が超伝導を抑制する原因を詳細に調べ、突き止めた。これは、超伝導物質を設計する上で重要なヒントになると考えられる。 (2)超伝導臨界温度T_cが2種類の結晶構造のパラメータで記述できる可能性を説明した。具体的には、銅および酸素が形成する平面と銅の頂点方向に接続している酸素との距離h_0および平面同士の距離dの二つが重要であることを突き止めた。 学会での発表としては、日本物理学会67回年次大会「銅酸化物におけるdz2軌道混成による超伝導抑制メカニズム」およびアメリカ物理学会'Two-orbital analysis on the material dependence of Tc in the single-layered cuprates,'において上記(1)について議論を行った。他にも、26^<th>International Conferenceon Low Temperature Physicsのポスター発表およびプロシーディングにおいて、dz2軌道がフェルミ面の形状を決定している理由を説明した。 銅酸化物のT_cに対する圧力効果について、日本物理学会2011年秋季大会「銅酸化物における超伝導転移温度の一軸性圧力効果の第一原理計算による解析」において議論を行った。現在その結果をまとめた論文を投稿中である。
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