研究概要 |
当該年度における研究では,前年度における動的システムの低次元化手法の一般化として,一般化特異摂動近似に基づく低次元化手法を提案した.ここで,一般化特異摂動近似とは,従来までの状態空間の射影による低次元化を一般化した概念であることが知られている.特に,本手法では,システムの受動性などに代表されるシステムのもつ物理的な性質を保存しながら,任意に与えられた近似精度を満たす低次元モデルを系統的に設計することが可能である.本研究成果は理論的な側面だけでなく,応用的な側面からもその発展性が期待される. さらに,この一般化特異摂動近似に基づく低次元化手法を,システムのネットワーク構造を保存する場合へと拡張することにより,受動的な分散制御系に対する制御器の低次元化問題に対して,有効な解を与えた.一般に,このような分散的な制御器に対して,所望の誤差精度を満たす低次元化近似を系統的に行うことは,非常に難しいことが知られている.一方で,本研究では,ネットワーク化されたシステム全体の受動性を保存することを切り口として,この問題への有効なアプローチを示したという点で,高い新規性をもつ. これらの研究成果により,制御器との相互作用構造を含む,対象とするシステムが有する物理的な構造を適切に保存した低次元モデルが得られるため,ネットワーク化された動的システムに対する統一的な解析および制御に役立つ基礎的な理論として,その応用可能性の高さが期待される.
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