研究概要 |
Hempelによって導入されたヒーガード分解の"距離"の概念は,どれくらい効率よく3次元多様体の断面(ヒーガード曲面)が取れているかを測っていると共に,3次元多様体の複雑さも捉えていることが多くの研究者によって明らかにされており,この概念を利用することで3次元多様体に関する様々な問題が解決されている.またHempelやEvansによって,いくらでも距離の大きいヒーガード分解が存在することが示されているが,この結果に対して次のような問題が設定できる. 問題:与えられた正整数nに対して距離がちょうどnになるようなヒーガード分解が存在するか? 本年度は,この問題に対して小林毅教授(奈良女子大学)張娟姫氏(奈良女子大学学振・外国人特別研究員)との共同研究で,次のような肯定的な解答を与えた. 定理1:任意の正整数nと整数g>1に対して,種数gのヒーガード分解でその距離がちょうどnになるようなものが存在する. 加えて,絡み目の橋分解に対しても同様の問題が設定できるが,これに関しても小林毅教授と張娟姫氏との共同研究において,特に絡み目の(1,1)分解に対して次の結果が得られた. 定理2:任意の正整数nに対してある絡み目の(1,1)分解でその分解の距離がちょうどnになるようなものが存在する.
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