研究課題/領域番号 |
11J09568
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研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
鈴木 孝宗 独立行政法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, 特別研究員(PD)
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キーワード | メソポーラス薄膜 / 酸化物半導体 / 導電性ポリマー / ポリマー太陽電池 |
研究概要 |
有機薄膜太陽電池では、p型半導体(ドナー性分子)/n型半導体(アクセプター性分子)ヘテロ界面におけるバンドオフセット差を駆動力に、励起子(電子-正孔対)が解離することで光キャリアが生成する。変換効率の向上には、活性層内で数多くの光キャリアを生成させ、それらを効率的に電極から取り出すことが必要である。光キャリアは光吸収により発生した励起子がドナー/アクセプターヘテロ界面に達することで生じるが、有機分子内の励起子の拡散長は10nm程度と非常に短い。そのため、ナノスケールオーダーでの規則構造を有するヘテロ界面を作成し、界面にたどり着ける励起子を増やすことが必要不可欠である。 本年度は、n型無機酸化物半導体として酸化スズを選択し、ブロックポリマーを界面活性剤鋳型としたメソポーラス薄膜の作製を行った。焼成により界面活性剤鋳型を除去することで、直径約20nmのメソ孔を有する薄膜の作製に成功した。SEM像および小角X線散乱からメソ孔の規則性が高いことを、TEM像から直径3nm~5nmの粒子が連結している様子を確認した。焼成温度を上げるとメソ孔の規則性は崩れてしまうが、スズ原子を亜鉛原子に置換することで結晶子サイズを抑制し、規則性を維持することに成功した。 作成したメソポーラス薄膜のポリマー太陽電池への有用性を調べるため、p型ポリマーであるP3HTとの積層膜を作成し、P3HTの光ルミネセンス測定を行った。P3HT内で生成した励起子(電子-正孔対)が再結合する前に、n型半導体である酸化スズに電荷移動を起こした場合、光ルミネセンス強度は減少する。メソポーラス薄膜に積層したP3HTにおいては、光ルミネセンス強度の減少が生じており、電荷移動が効率的に生じていることが示唆された。これらの結果から、作成したメソポーラス薄膜は高効率ポリマー太陽電池の作成に向けて有用である事が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
無機/有機ハイブリッド太陽電池の研究に関しては、実際にn型酸化物半導体である酸化スズポーラス薄膜の作製に成功し、p型ポリマーであるP3HTから酸化スズポーラスへの電荷移動が効率的に生じていることを確認できたため。また、くし形ポリマー太陽電池の研究に関しては、鋳型となる陽極酸化ポーラスアルミナ薄膜の作製システムを確立し、研究体制が整ったため。
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今後の研究の推進方策 |
無機/有機ハイブリッド太陽電池に関しては、メソポーラス酸化スズ薄膜を用いた太陽電池を実際に作成し、変換効率の向上が達成されるか調べる。また、亜鉛置換ポーラス酸化スズ薄膜の基礎物性(導電率、キャリア濃度、キャリア移動度等)を調べ、太陽電池に応用した際の変換効率に与える効果を詳細に調査する。それと平行して、酸化スズ以外の無機酸化物半導体(酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ニオブ等)を用いたメソポーラス薄膜の作製を行う。 くし形ポリマー太陽電池に関しては、研究体制が整ったため、本年度より本格的に始動する。
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