研究課題/領域番号 |
11J09590
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
奥田 一志 東京工業大学, 大学院・理工学研究科(工学系), 特別研究員(DC1)
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キーワード | らせん高分子 / C_2キラルユニット / ポリチオフェン / フォルダマー |
研究概要 |
C_2キラルなスピロビフルオレン構造を母骨格として持つビチオフェンを合成した。これを、種々のチオフェン誘導体を重縮合することで主鎖にC_2キラルユニットを含むポリチオフェンを合成した。分光学的手法により、得られたポリマーの高次構造についてモデル化合物との比較を行い解析した結果、ランダムコイルであることが明らかとなった。これを塩化鉄により酸化することで、オリゴチオフェン部位が酸化されたラジカルカチオンが生成したことがUV-visスペクトルから示唆され、モデル化合物との比較から、内径、ピッチが完全に制御された片巻きらせん高分子が形成されていることを確認した。また、これを還元することで元のランダムコイルへと戻った。これにより、ランダムコイル、片巻きらせん構造の間で可逆的な構造のスイッチングを達成した。 一般的ならせんフォルダマーは溶液中、ランダムコイル、左巻き、右巻きの間で平衡となっており、何らかのキラル源を導入することで巻き方向を偏らせている。こういった系では100%片巻きらせん構造を得ることは困難であり、そのことがらせんフォルダマーを触媒やキラルホストとして利用する際に、その機能を低下させるという問題があった。 一方、今回合成したポリマーはC_2キラルユニットを含むために一方の巻き方向のらせん構造のみ形成する。さらにポリチオフェンを組み込んだことにより、ランダムコイルと片巻きらせん構造の間で酸化還元により可逆的に変換することができるフォルダマーとなり、不斉場を利用した触媒やホスト分子として高い選択性を示すのではないかと期待される。 現在、合成したポリマーについてカーボンナノチューブやフラーレンと錯体を形成するかどうかを検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、チオフェン環を組み込んだカルド構造を合成、重合することでらせん高分子へと展開した。得られたポリマーは酸化還元によりらせん構造とランダムコイルの間で可逆的に変化させることが可能であった。
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今後の研究の推進方策 |
現在、光により片巻きらせん構造とランダムコイルの間で構造変換するポリマーを新たに合成している。この構造変換により高分子の流体力学的半径が大きく変化することを利用したアクチュエータへの展開を考えている。方法として、らせん構造を形成した高分子を配向・集積させたフィルムを作製、光を照射することでアクチュエータとして機能すると考えられる。
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