研究概要 |
本研究は、希土類元素Mによる正20体クラスター内に多面体を内包する金属合金(Cd6Yb,Cd6Ca)において発見された、内包原子群の配向の規則-不規則相転移という新しいタイプの構造相転移の機構を調べることを主目的としている。今年度は、クラスター中心にCd4面体を内包するCd6M立方晶群の中で、まだ相転移の有無についてしらべられていないCd6M(M=Sr,Pr,Nd,Sm,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Lu)について相転移の有無を調べることで、一連のCd6M立方晶群での本相転移の有無を明らかにし、クラスター中心の4面体に対する外側のM原子の役割について知見を得ることを目的とした。試料作製は、100~300h熱処理を施して結晶性を良質化した試料を作製し、20K~300Kでの低温TEM観察や電気抵抗率測定を行いて調べた。それによると、Cd6M立方晶群の中でもCd6M(M=Sr,Pr,Nd,Sm,Gd,Tb,Dy)が100K付近で構造相転移を起こすが、Cd6M(M=Ho,Er,Tm,Lu)が20K以上では相転移を起こさないことがわかった。これにより、正20面体クラスターを構成するM原子の大きさが小さい場合、すなわち正20面体クラスター内の空隙の大きさが小さいと規則-不規則相転移が抑制されることをを見出した。また、今年度は同じ4面体を内包する正20面体クラスターを持ち、Cd6Mと同種の規則-不規則相転移が起こることが期待されるCd5.7Yb及びZn88Sc12準結晶においても、高温TEM観察を用いて構造相転移の有無の探索を行なっている。
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