研究課題/領域番号 |
11J09614
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
坂東 桂介 東京工業大学, 大学院・社会理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | マッチングマーケット / 外部性 / 安定マッチング / 不動点アルゴリズム |
研究概要 |
本研究では、企業と労働者の雇用関係を「外部性のあるマッチング理論」の枠組みで考察している。マッチング理論は、市場に二種類の異なるタイプのプレイヤーが存在し、各プレイヤーは相手側のプレイヤーとパートナーシップを形成したいと考えている状況を扱う。この時、マッチング問題ではどのようなマッチングが各人にとって望ましいのかを考察する。マッチング問題における解概念は「安定マッチング」である。これは、「どのプレイヤーのペアも現在の契約を解消し、新たに再契約を結ぶ事でお互いに得をすることができないマッチング」である。多くの先行研究では、各プレイヤーの好みは自分が組んでいる相手によって定まり、他のプレイヤー達が誰と組んでいるのかに依存しない事が仮定されている。しかし、現実にはこの仮定が満たされないような状況はしばしば観測される。例えば、プロスポーツのチームと選手の市場を考えれば、チームは選手を雇ったうえで、さらに他のライバルチームと競合する構造になっている。従って、各チームの利潤はライバルチームがどの選手を雇っているのかに依存していると考える方が自然である。このように、各プレイヤーが他のプレイヤー達のパートナーまでも気にするマッチング問題の事を、「外部性のあるマッチング問題」という。私の研究では外部性のあるマッチング問題における安定マッチングの分析に焦点をあて(1)安定マッチングをみつける効率的なアルゴリズムの設計、および(2)安定マッチングの形成プロセスについての研究を行った。今年度は(1)の問題に重点的に取り組み、「安定マッチングの存在条件を満たすような環境では、安定マッチングの集合の中で全ての労働者にとって最も好ましい安定マッチングが存在し、それは拡張不動点アルゴリズムによって計算量の意味で効率的に見つける事が出来る」という事を証明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)の研究については「安定マッチングを見つけ出す効率的なアルゴリズム」を提案する事ができたうえ、さらに労働者最適安定マッチングの存在性を証明したという点では期待以上の成果があったといえる。しかし、(2)の研究についてはまだ十分に取り組めていないのでこのような評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
(1)の研究については、これまでの研究成果を国内および国外の学会で発表を行い、専門家と議論を重ねていきながら論文の質を向上させていきたい。(2)の研究については、夏までには結果をだし論文としてまとめ、その後に開催される国内および国外の学会で発表を行いながら論文の質を向上させていきたい。
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