研究課題/領域番号 |
11J09626
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
杉浦 一徳 東京工業大学, 生命理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | レドックス / 蛍光タンパク質 / 酸化還元 |
研究概要 |
今年度の研究で本研究のの目標の一つであるpH非依存性蛍光タンパク質roSiriusの作製および、過酸化水素感受性の蛍光マーカーとしての利用が期待されるroGFP1_AtGPx1融合タンパク質の作製に成功した。私は緑色蛍光タンパク質GFPの変異体のひとつであるSiriusの持つ蛍光挙動がpHに依存しないという特性に着目した。Siriusの励起スペクトルを見るとSirius発色団由来の375nmのピークと分子内のTrp(W57)に由来すると思われる280nmのピークが見られる。Trpの蛍光波長は370nm前後なので、Trp残基とSirius発色団の間ではFRETが起こりうる。そこでSiriusの分子表面にCysを配置し、その周辺にTrpを導入したroSirius、Sirius(S147C/S202W/Q204C)を作成した。roSiriusではジスルフィド結合の形成・乖離に伴いTrpの位置や向きが変化しFRET効率が増減することでTrp由来の280nm励起時の蛍光強度が変化する。この際375nm励起の蛍光強度はほとんど変化しないためEx280/375を測定することで、タンパク濃度に依存せず酸化還元状態をモニタリングすることが出来る。また従来利用されている酸化還元応答GFP、roGFPと異なりpHに依存して励起スペクトルが変化しないため、より正確な測定が可能になると期待される。本研究ではグルタチオンプールの酸化還元割合の変化に先だって起こるであろうと予測されるROSの発生を可視化することを目的としているが、roGFPの酸化還元電位は、Grxを介してグルタチオンプールの影響を強く受けているといわれている。そこで過酸化水素(ROS)に効果的に酸化され、かつGrxの影響を受けにくい蛍光タンパク質を作成することを考えた。AtGPx1はArabidopsis thalianaの細胞質に局在する過酸化水素を還元する抗酸化酵素である。このAtGPx1をroGFPとリンカーを用いて繋ぐことで過酸化水素の発生による酸化力がGPxを介してroGFPを酸化するのではないかと考えた。作成したroGFP_AtGPx1は狙い通り高い過酸化水素感受性を持つことが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した初年度の目標であるpH非依存的な酸化還元応答タンパク質の作成および過酸化水素感受性蛍光分子マーカーの作成に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究でpH非依存的な酸化還元応答タンパク質roSiriusの作成に成功した。さらにroGFPにGPxを繋ぐことでroGFPが過酸化水素感受性を持つことも確認できた。今後は当初の予定通りroSiriusとGPxの融合タンパク質を作成し過酸化水素感受生でありなおかつpH非依存的な蛍光分子マーカーを作成する。 またroSiriusは単体では酸化還元電位が低いため、GrxやTrxとの融合タンパク質を作成し酸化還元電位を改善する。
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